PM2.5による大気汚染が進む北京は、もはや国際的なスポーツの祭典が開催できる都市ではないとの指摘がある。そして鳥インフルエンザ。環境問題の面でも、中国は日本を巻き添えにする危険をはらみながら死の淵に直面している。
「10月20日の北京マラソンはPM2.5が心配されたが、快晴に恵まれ、何とか開催にこぎ着けた。しかし、PM2.5の影響を案じた多くのランナーたちは防塵用のマスクを着用して北京市内を駆け抜けた」(外信部記者)
中国では、毎年9月、10月は「北京秋天」と呼ばれ、青い空が広がる。北京では年間降水量の半分以上が7~8月に降るため、空気中のチリやホコリをほとんど洗い流してしまう。
ところが、今年は国際マラソンの3週間前、PM2.5による大気汚染が「レベル6」にまで上昇したのだ。
スポーツジャーナリストの織田淳太郎氏が言う。
「有毒ガスが充満する中、トレーニングを続けていたら免疫力は落ちます。とりわけ、有酸素運動は酸素を取り込んで循環機能を上げるもの。細かい粒子のPM2.5を肺の奥深くまで取り込むことになるので、体にいいわけがありません。すぐに影響は出ないにしても、10年、20年とそういうことを続けていると、中国のスポーツ界は取り返しのつかないことになるかもしれない」
実際、5年前の北京五輪では、男子マラソンで優勝候補と見られていたエチオピアのハイレ・ゲブレシラシエ選手が健康被害を恐れ出場を辞退しているのだ。
影響が出るのはマラソン選手にとどまらない。今年10月にはテニスのチャイナオープンと、女子プロゴルフツアーのレインウッドLPGAクラシックが北京で開催された。チャイナオープンに出場したテニスのロベルト・リンドステット選手は自身のブログで、こうこぼしたという。
「あきれるくらいにひどい空気だ。いったい、どれくらい寿命が縮んだだろうか‥‥。来年の参加はよく考えないといけない」
ゴルフもマスクを着けてコースを回る選手の異様な姿が目立った。
ところで、昨年開催されたロンドン五輪で中国は金38、銀27、銅23とアメリカに次ぐメダル獲得数第2位を誇ったわけだが‥‥。
織田氏が続ける。
「中国のスポーツ界も才能のある子供を国家が養成する。例えば、体操なら背が伸びない薬を飲ませて体操競技向きの体にするそうです。国家の威信のために、個人を犠牲にするのは当たり前です。その代わり、将来にわたって年金を保証するが、今のような環境では子供が才能を発揮できるかどうか‥‥」
かといって、まだ空気のきれいな農村部の子供は貧困のためスポーツを楽しむ余裕などないのが現実だ。
「中国がメダル獲得数をアメリカやロシアと競い合うのはロンドン五輪が最後になるのではないか」(外信部デスク)という声もあるのだ。