PM2.5だけではない。中国を脅かすのが将来のパンデミック(世界的大流行)がささやかれる鳥インフルエンザである。現在、中国国内で拡大しているのはH7N9型だが、数年後にはH5N1型がパンデミックになるかもしれないと言われている。
中国では今年に入ってH7N9型の感染が136人確認され、そのうち46人が死亡している。
中国で頻繁に伝染病が発生するのは、きわめて構造的な問題があるから、と言うのは南郷氏だ。
「中国は資本主義と接することのできた沿岸部の都市に住む、ほんの一握りの国民だけが圧倒的な富を築くことができたが、内陸に住む10億の国民は貧困にアエいでいる。社会主義を標榜していながら、中国は日本のような医療保険制度が存在しないため、貧しい農民は病気にかかっても病院で治療を受けることができない。診療所さえない村も少なくありません。当然、伝染病にかかっても、診察が受けられず、発見が遅れることが少なくない」
しかたなく、貧しい農民は効き目も定かではない市販薬を購入して服用するが、ニセ薬も多いという。
工場の廃液などでガン患者が異常に多い「ガン村」に潜入した前出のカメラマン・八木澤高明氏もこう指摘する。
「末期の食道ガンを患った男性は投薬も受けず、じっと家で死を待っていました。農民の多くは食うや食わずで、一家に大病する人が出ると、破産すると言われています」
これから迎える冬は、まさにインフルエンザの季節。怖いのは鳥インフルエンザの発生に通常のインフルエンザの流行が重なることだという。
外信部記者がこう続ける。
「中国の田舎の医療施設では通常のインフルエンザと鳥インフルエンザの患者を見分けることは難しい。多くの患者のうち誰を隔離治療すればいいのか、判断に迷っているうちに流行は爆発的に広がってしまうでしょう」
年が明ければ、最大のイベントである春節(旧正月)の大連休が始まる。この春節には全国各地の中国人たちが故郷に里帰りする習慣があり、鉄道、飛行機、長距離バス。全ての交通機関は大混雑になる。
この満員スシ詰めの列車やバスに1人でも伝染病の感染者が紛れ込んでいたら、当然、流行は中国全土に広がってしまうだろう。
近年、裕福になった中国人の中には、この春節の連休を利用して日本にやって来る観光客も増えている。
中国国内で鳥インフルエンザに感染した中国人が大挙して来日したら、それをどう水際で食い止めるか。
日本は何らかの防衛策を打ち立てることが求められている。