共産党内部にはびこる拝金思想への反発をよそに中国各地では極端なバブル経済を感じさせるニュースが報道されている。
例えば内モンゴル自治区では、近代的な高層マンション群が完成したものの、入居する住民がまったくいないのだ。
中国各地では、このようなゴーストタウンがそこここに誕生している。
「でも、買い主は確かに存在しています。中国では一握りの大金持ちが投資用として、何十棟ものマンションを購入しているんです」(富坂氏)
とすれば、これこそ格差の象徴だが、中国の全土で今、このように“無謀な投資”が止まらないのだ。
どう考えても外資など集まりそうもない辺境の土地に、産業開発特区を作る。採算性を度外視した地下鉄路線を網の目のように張り巡らす。いくら世界第2位の経済規模に躍り出たといっても、こんなに乱暴な開発を続けていったら必ずどこかでハジけてしまいそうだが、中国事情に詳しいジャーナリストの南郷大氏が解説する。
「まるで壁に向かって全速力で車を走らせているようなもので、日本人なら誰もが首をかしげてしまうような光景ですが、実を言えば彼ら中国人もそんなことは百も承知なんですよ。では、なぜ無謀な投資が中国全土で行われているのか。それは公共事業の担当部署の権力者が私腹を肥やせるからです。高速鉄道でも地下鉄網でも、あるいは巨大ダムでも国際空港でもいい。できるだけ派手で巨額な投資を必要とするプロジェクトならば、なおさら結構です。彼らにとって問題なのはそれが完成したあとの採算性や経済効率、さらには国民たちが本当に必要としている事業なのかどうかなどではありません。要は共産党の権力者たちに、賄賂が集まるかどうかが問題なのです」
例えば地下鉄の建設なら、車両メーカー、建設業者、鉄鋼業者。そういった連中がきれいな少姐(ホステス)のいる高級クラブやゴルフ場で、共産党幹部を接待し、帰る時には「紅包」と呼ばれる賄賂の入った封筒をそっと渡す。そして、プロジェクトの規模が大きければ大きいほど、渡される賄賂も高額になっていくという。
「共産党幹部は、いちばん高額の賄賂を送ってきた企業を請負業者に選定し、工事や資材の納入を発注します。企業の実績、技術、納入される資材の品質はまったく関係ない。賄賂をたくさん出した企業が請負業者の指定を受けるのです。とはいえ、受注に成功した企業は、その帳尻を合わせなければならない。支払った賄賂に応じた資金は、どこかで必ず抜かなくてはならない。それがセメントだったり鉄筋だったり電子機器だったりするわけです。本来は必要なはずの資材を省略して、建設を強行する。破綻が生じるのは当然です。これがつまり中国の有名な『おから工事(手抜き工事)』がバッコする構造です」(南郷氏)
かくして中国の巨大プロジェクトはどれも安全性や耐久性など、まったく期待できないシロモノが大量生産されていくことになる。
「そして賄賂を受け取った共産党の役人たちは、その金を海外に住む家族に送金して、タップリとため込んだら自分自身も国外へと脱出するのです」(南郷氏)
こうした腐敗の連鎖が、中国ではすっかりシステム化されてしまった。
中国の巨大な建設プロジェクトは、そのどれもが「中国の巨大な墓標」のようだ。