テリー 改めて45年前を思い返すと、あの頃ってどんな気持ちだったの?
岩崎 高校2年生で初めてのレコーディングを体験した時は、ヘッドホンから聴こえてくる音楽が心地よくて心地よくて。お風呂で歌ってるみたいな声が、そのまま楽器とともに入ってくるわけじゃないですか。生の楽器の音の美しさとか、録音技術の高さとか、やっぱりプロの世界ってすごいなと思いました。
テリー それ、16歳ぐらいで感じるってすごいよね。普通は「うまく歌えるかしら」とか「ヒットするかしら」とか「今日の私、可愛いかな」とか、そっち側に意識が行くような気がするんだけど。
岩崎 そうなんですかね。アイドル的な売られ方をしてなかったからかな。
テリー もともと音楽はやってたの?
岩崎 合唱団にいました。
テリー あ、やっぱり基礎があったんだ。歌うまいもんなぁ。で、デビューしてドーンと行ったでしょ。
岩崎 2曲目の「ロマンス」ですね。デビューして3カ月後です。
テリー それは普通の(江東区)深川のお嬢さんとしては、どうだったの?
岩崎 高校から堀越学園に行くようになったんですけど、1年の時は誰も私のこと知らないから、電車で寝てても起こしてくれないんですよ。でも、2年生からは「(降車駅の)中野ですよ」って起こしてくれるようになって。それだけ顔を知られるようになったんだなとは思いましたね。
テリー あんな人気だったのに、電車で通ってたんだ。
岩崎 そうですよ、東京出身ですから。で、中野駅を出たところに大きいパチンコ屋さんがあって、いつも「ロマンス」がかかっていて。それで「あぁ、『ロマンス』は売れてるんだな」って感じましたね。
テリー で、パチンコ屋に入ったんでしょ。
岩崎 いや、入らないですよ(笑)。当時は今みたいにみんなヘッドホンじゃなくて、街に音楽があふれてましたからね。
テリー そういう時代だったよね。でも、それってうれしいね。
岩崎 もちろん、すごくうれしかったです。あと忘れられないのは、同じレコード会社所属だった桜田淳子さんが私のところに来て。
テリー どっちが年上?
岩崎 同い年です。ただ、淳子ちゃんのほうが芸能界では3年か4年先輩で。その淳子ちゃんに「宏美ちゃんの『ロマンス』すごく大ヒットしてるけど、私も頑張るから」って楽屋で言われたんですよ。でも先輩だから、何て答えていいのかわからなくて「はい」って。後にも先にもそんなこと言ったのは淳子ちゃんだけです。
テリー へぇ。昔は楽屋が個室じゃないから、そういうことも多かったのかな。
岩崎 1部屋に女性、1部屋に男性っていう感じで分かれてるだけでしたよね。だから、すごくお行儀見習いもできたし。
テリー 行儀見習いって?
岩崎 先輩たちの動きを見て、ああいうことはしちゃいけない、こういうことはしようとか。例えば、わかってないマネージャーさんだと新人をいちばん奥の鏡の前に座らせちゃったりするんですよ。そうすると「新人は手前よ」とか「化粧の前は使えないのよ」と先輩方が教えてくれるんです。
テリー 例えば誰?
岩崎 和田アキ子さんが「あなた、なんでそこに座ってるの。ここよ」とか。だから、すごい勉強になりました。
テリー 当時、大忙しだったでしょう。
岩崎 だから取材で「1日が25時間になったら、増えた1時間で何をしたいか」って質問に「また仕事入れられます」って言ったんです(笑)。当時はそのぐらい大変でしたね。