現場は常軌を逸した惨状が続いている。ちなみに八木澤氏はこんな話を聞いたという。
「福島原発が水素爆発した際、何号機のものかは定かではないが、燃料棒の一部が敷地の中に落ちていた。しかし非常に線量の高いものでしょ。では、どうしたかというと、遠隔操作のブルドーザーで運び、瓦礫と一緒に原発のそばを流れる川の河川敷に埋めてしまったというんですね」
そもそも仮に4号機の全ての燃料棒取り出しに成功したとしても、1~3号機の燃料棒が残っていることは周知のとおりだ。
社会部記者が言う。
「1号機の使用済み燃料プール内にある燃料棒70体が東日本大震災前から損傷していたことがこのほどわかりました。1号機プール内に保管されている使用済み燃料は292体で、その約4分の1に相当する。損傷した燃料棒を取り出す技術は確立しておらず、2017年にも始まる1号機の燃料棒取り出し計画や廃炉作業は困難を極めます。事故前から損傷していた燃料棒は1号機プールの他にも2号機プールに3体、3号機に4体、4号機に3体の計80体あった。しかし、震災後は、1~3号機は線量が高すぎ誰も近づけず、もはやこれらがどうなったかも、はっきりしたことは言えないのです」
1~3号機の原子炉格納容器の内部では、炉心溶融で溶け落ちた核燃料と金属類のくずが熱を発しており、現在、真水による冷却が続いている。
溶け落ちた核燃料の実態を高放射線量の中で把握し、取り出すまでの長期にわたる技術が確立されておらず、その工程も手探りの状態。
「現場ではこのまま水を流し続けるしかないのではないかという諦めに似た空気がある」(前出・八木澤氏)
廃炉まで40年──いや、廃炉できるのかどうかもわからない現状。一刻も早い詳細な情報開示による事態の広範な共通認識が形成されなければ、現場作業員ならずとも感覚が麻痺しそうになる。