—
突然、父が亡くなって遺品や財産の整理をしているのですが、遺言書を残していたわけではありません。どこの銀行にどのくらい預金があるのか、あるいは保険は何種類あるのか、など調べるのも大変。その上、困ったことに、どこの金融機関や保険会社も「まずは死亡診断書を紙で下さい」と要請してきます。あまりにもアナログすぎて先に進みません。この時代にどうかと思うのですが‥‥。
—
死亡診断書の作成だけで何十枚になってしまい、下手をすれば100枚に、という話は確かによく聞きます。実は葬儀関係の業界からも同じような相談を受けているのですが、とにかくお役所も金融機関も、まだアナログなんですよね。
この相談者は、父親がどこの銀行にどれだけ預金があるのか、そこから調べ上げていくことから始めています。よほど大変だったことでしょう。預金先がわかっているケースでさえ、死亡診断書を何十枚も用意して苦労するといいますから。
とある私の知人は、亡き祖父がメールで「もし自分が死んだらこうしてほしい」という遺言書のような文面を残していました。それを持って金融機関に相談に行ったところ、「紙で下さい」と突き返されてしまったそうです。メールの文面でダメなんだから、LINEなんてもってのほか。当然ながら「一体、いつの時代だよ!」と激怒していました。デジタル診断書があれば、紙を何枚も用意しなくてもいいんですから。
とはいえ、今回の陳情はグッドタイミング。まさに今、この問題が改善されようとしているのです。
この9月1日にようやく、デジタル庁が発足しました。準備に時間がかかったとはいえ、いよいよスタートです。デジタル庁の前身は内閣官房ですが、実は以前、僕は内閣官房へ陳情を行っています。まさしく葬儀会社経営者からの相談であり、「とにかく葬儀関係は紙でなんたら、ハンコがどうの、と本当に進まない。コピーするだけで1日かかってしまう」というもの。これをそのまま伝えたところ、答えはというと──。
「手続き関連においてはDX(デジタル・トランスフォーメーション)化していくつもりで、全てデジタル庁が率先して行っていきます」
DXを直訳すると「デジタル変換」。デジタル技術を浸透させ、既存の枠組みや方法論を覆すような改革を指します。事実、菅総理は「手続きの一切をデジタル化にします」という政策を内閣発足後に打ち出していました。その際、河野太郎大臣が「ハンコをまず、やめろ」と発言して、10月1日の「ハンコの日」に改正・電子帳簿保存法が施行されています。
ということで、厚労省、法務省などの悪しき縦割り行政を取りまとめ、作業を進めているデジタル庁に期待したいところです。
余談ですが、エンディングノートがあると紙の手間がかからず、最もスムーズなんだとか(といっても、これ自体が紙ですけどね)。とはいえ、エンディングノートは身内にしても「書いておいて」とは頼みにくいもの。いずれ自分が当事者になった時のことを考えて、あらかじめ準備しておくことをお勧めします。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ)◆1981年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、日本生命などを経て12年に衆院議員に(京都3区)。16年に議員辞職後は、経営コンサルタント、テレビコメンテイターなどで活動。近著に「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」(徳間書店)。