食中毒は、気温の高い夏の時期に多いと思われがちだが、秋がより注意を要する。というのは、細菌性「カンピロバクター食中毒」が多発するからだ。
細菌による食中毒は、少量の菌で発症する。中でも、鶏刺しなどの生食や、加熱が不十分なものを食べて、下痢や腹痛を起こす場合が多い。過去の厚生労働科学研究の結果によると、市販の鶏肉から「カンピロバクター」が高い割合で検出されているそうだ。決して「新鮮な鶏肉だから生で食べても安全」ではないのである。
他にこの時期に多いのは「ウェルシュ菌」。これは、人や動物の大腸内常在菌で自然界に幅広く生息する細菌で「酸素がなくても増殖する「嫌気性菌」のため、高温でもなかなか死滅しない。
特にカレーやシチューを作る際は注意が必要だ。大鍋で大量に調理すると他の菌は死滅するが、鍋底が酸素の少ない状態になり、「ウェルシュ菌」が繁殖しやすくなる。感染すると、通常6~18時間で下痢を引き起こす。
対策としては、食材は中まで十分に加熱することが肝心。また、まな板を介して、菌が他の食材に付着する場合もある。二次感染を防ぐためにも、肉などの食材を使う場合は、一回、洗剤で洗った方がいいだろう。また最近では、コロナ禍で持ち帰りの食品も増えているが、常温で長時間持ち歩くのはやはり危ない。なるべくすぐに食べて、残ったものを後日食べる場合は、レンジなどでしっかり加熱することが必要だ。
時々、「一度食中毒を発症した食材は食べない方がいい」と思い込んでいる人もいるが、その心配は無用だ。例えば、カキやサバなどにあたった場合は、それは食中毒ではない可能性が高い。むしろ、その食材に対するアレルギー反応の可能性もあるので、病院で検査をした方がいいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。