2000年の歌手デビューから22年目を迎えた氷川きよしに、今、ますます注目が集まっている。特に話題となっているのは、舞台衣装やブライベートでのファッションだ。
スタイルの変化に注目が集まったきっかけは、2019年にYouTubeで公開された31枚目のシングル「限界突破×サバイバー」の公式ライブ映像。黒のアイシャドウに大振りのイヤリング、透けた素材の衣装でポップスを激しく歌い上げる様子は、これまでの演歌界の「若様」「プリンス」として扱われてきたイメージを一新するものだった。
動画再生回数は約10日間ほどで100万回を超え、“氷川きよしが何か変わった”という印象を世間に与えた。翌年のNHK紅白歌合戦にも同曲を歌った。その際には、黒のエナメルのニーハイブーツ、脚と腕にレースをあしらったハイレグ・コルセット風のボディスーツ、そして肩出しという衣装で観客を魅了した。
この衣装での出演以降、2021年に入り、氷川のインスタグラムでの投稿にもゆるやかな変化が。2019年にも、テレビ番組やコンサートでのトーク、週刊誌のインタビューなどで「『きよし』よりkii(キー、またはkiina・キーナ)と呼ばれたいこと」、また「男らしさへの葛藤」について言葉にしていた氷川。それ以降、インスタでは中性的な魅力を放つ写真を少しずつアップするように。そして2021年7月あたりからはハーフズボンから美脚をのぞかせる写真をよく載せるようになった。髪も少しづつ長めになり、カットによっては「綺麗なお姉さん」にさえ見える写真が増え、インスタやツイッターでたびたび反響を呼んだ。
2021年9月12日に東京都内で開催された初のポップス・コンサートツアー『氷川きよし「You are you」 Release Tour 2021』では、ロングヘアを後ろでひとつにまとめ、大腿部を出した黒のボディ・スーツ衣装で登場。往年のマドンナやレディ・ガガ、アリアナ・グランデを思わせる華麗な出で立ちで歌を披露した。
さらに9月17日のインスタでは、黒のチュールドレスに、黒いハットでかわいさとクールさを備えた舞台衣装を投稿。新曲「You are you(あなたはあなた)」の名のとおり、性別にとらわれない、現在の氷川きよしとしてのスタイルを打ち出したのだ。しかしその4日後、所属事務所からはSNSで一部の人間が「当人を侮辱し、人格権を侵害する内容」を投稿していると警告が発表される。
長年のファンが氷川きよしの新スタイルを快くうけとめるケースが多い一方、いわゆる「男らしさ」にこだわらない格好を良く思わない人間もいるのが現状だ。演歌界に詳しい芸能記者が言う。
「きちんとお金を出してコンサートに行くコアなファンは、応援グッズにもう『きよし』ではなく、『きーちゃん』や『kii』という字を盛り込んで本人を盛り立てています。『き・よ・し!』という声かけは、もう古いのです。ただ、そんなファンばかりではなく、年配の女性ファンで、『今の氷川クンは嫌い』と離れてしまうケースもあるようですが」
賛否両論は、どうしてもつきまとうものかもしれないが、「彼」でも「彼女」でもない、kii /kinnaとしての氷川きよしは、ステージやインスタグラムで今日ものびやかに「今の自分自身」を表現している。