2021年9月30日付で引退届が受理され、白鵬こと間垣親方の第2の相撲人生の幕が開いた。10月16日の土曜日、紺のスーツに金色のネクタイを締めた白鵬の姿が両国国技館にあった。薬物問題などの研修会に出席する白鵬である。白鵬が言う。
「車から降りると、報道陣のみなさんに交じって、多くのファンも待ち構えていて下さり、『白鵬ォ!』『白鵬関!』と声をかけて下さり、中にはさっそく『間垣親方ァ!』って呼んでくれるファンの方もいて、感謝の言葉しかありませんでした」
本場所での初仕事は、11月14日日曜からの十一月場所(九州場所)になる。スーツ姿に、あのお馴染みの紺色のジャンパーを羽織り、館内警備の仕事がスタートする。
さて、2003年、18歳の白鵬は、巨漢兄弟子・荒若(通称・ながい)(を土俵の外に押し出せるようになっていた。「初めて荒若(ながい)さんを押せたァ!!」と喜ぶ白鵬。荒岩と言えば、「確かに私にもいつか終わりは来るでしょう。それが半年先あるいは1年先なのか、いや明日かも知れません」とオビに記された白鵬自身の予言=決意が反響を呼び、復活全勝優勝を果たした七月場所の真実が語られている同時進行相撲マンガ第1巻「英雄の子」の中にも登場する。入門当時、ぶつかり稽古で、「鼻クソを擦りつける」のが精いっぱいだった相手である。
白鵬が振り返って語るには、「1回押せると、後は面白いように押せるようになったんです」という荒若は185キロのアンコ型の力士である。いつの間にか地力をつけていた白鵬であった。「正直、うち(宮城野部屋)の幕下以下には、もう負ける気がしなくなっていました」とまで、言い切る白鵬に立ちふさがる壁は、関取・光法(こうぼう)のみ。
土俵に塩を撒き、光法が言う。「白鵬!!三番稽古だ。土俵に入れ!」。三番稽古とは、実力伯仲の力士同士が続けて行う稽古の方法である。三番だけ相撲を取るのではなく、実際には、何番でも相撲を取る稽古だ。
はたして、三番稽古の行方やいかに。
エキサイティングな若き日の白鵬が躍動する「白鵬本紀」第26番「新旧交代」は、11月2日発売「週刊アサヒ芸能」11月11日号に掲載。はっけよい!!