間垣親方(白鵬)が語る。
「新米親方として臨んだ九州場所では色々なことを学ぶことが出来ました。午前中から国技館に出勤して、各部署への挨拶、監督業務、西の花道の警備、ファンとの交流と目まぐるしい一日でした」
そんな中でも、白鵬の目線は、すでに親方のそれである。間垣親方が続ける。「その合間を縫って、幕下からの取組を見ることが出来たのは新鮮でした。大鵬さんの孫の王鵬(おうほう)、照ノ富士と阿炎(あび)の対戦した一番などが特に印象に残りましたね」
あらためて、「迫力ある力士同士のぶつかり合いや、鍛え上げて、盛り上がった筋肉など、現役力士達は本当にかっこいいなと思いました」と後輩達をリスペクトする白鵬である。そんな白鵬を主人公として「週刊アサヒ芸能」で連載中の同時進行相撲マンガ「白鵬本紀」の、第32番「初めての十両土俵入り」は12月14日発売の同誌12月23日号に掲載されている。
前出の間垣親方の近況報告に続いて、舞台は2004年一月初場所に移る。若き白鵬の番付は東十両12枚目。関取として臨む場所である。新十両になったことで、ガラッと生活が一変する。
「まず何より違うのは関取になると個室が与えられること」(白鵬)で、さらには、「付け人」が付くことになる。そしてなんと、宮城野親方から白鵬の付け人に指名されたのは、白鵬の兄弟子のサンチルこと龍皇だった。白鵬と同じくモンゴル・ウランバートル出身で白鵬の1年先輩である。そのことが、「死ぬほど悔しい」と言うサンチル。宮城野親方は諭す。
「その悔しさを日々忘れず、一層稽古に打ち込むんだ。わかったな」
「ハイ! 頑張ります! ごっちゃんです」
と返すサンチル。非情な、実力がものをいう世界である。
関取の象徴である明荷(あけに)と化粧まわし、紋付の羽織袴が届き、迎える2004年一月場所初日。大銀杏も凛々しい白鵬である。
場内アナウンスが響く。
「これより東方十両土俵入りであります」
そして、響き渡る「白鵬ォ!! モンゴル ウランバートル出身 宮城野部屋!!」。
白鵬、初めての十両土俵入りである。
「やっと ここまで来たぞ!!」と、感慨に浸る暇もなく、怒涛の本場所15日間の幕が切って落とされるのであった…。
「確かに私にもいつか終わりは来るでしょう。それが半年先あるいは1年先なのか、いや明日かも知れません」との白鵬自身の横綱時代の心境がオビに記され、復活全勝優勝を果たした七月場所の真実、そして少年時代の白鵬が成長していくドラマがたっぷり詰まった「白鵬本紀」第1巻「英雄の子」が発売中だ。
そして前述の、のちに白鵬の付け人となるサンチルとのエピソードも、「龍と狼のケンカ稽古」として描かれている「白鵬本紀」第2巻「白鵬のいちばん長い日」が11月30日に発売された。同巻では、若き日の白鵬のエキサイティングな物語に加え、引退記者会見で話題となった「横綱相撲とは?」の問いへの白鵬自身の思いも語られている。