日本人に蔓延している「脂肪肝」。3人に1人と言われているが、文字通り肝臓に脂肪がたまる疾患だ。放置すると、生活習慣病のリスクを高めたり、肝硬変や肝臓ガンに進行する危険性も孕む。
肝臓はたんぱく質の生成や脂肪の代謝の調節、血中の毒素の排出など様々な働きをしている。しかし「脂肪肝」になると、毒素の排出が十分に行われず、血液がドロドロになり、全身の細胞に酸素や栄養分が十分に補給されなくなるのだ。
お酒の飲みすぎが肝臓に悪いことは知られているが、「脂肪肝」で一番の原因は食べすぎだ。「非アルコール性脂肪肝」と呼ばれ、脂質や糖質の過剰摂取で発症する。パンや麺類などの炭水化物や甘いお菓子などを摂りすぎていると、肝臓に中性脂肪がたまりやすくなる。
「脂肪肝」は、ほとんどの場合が無症状で、血液検査や超音波検査、エコー検査などで初めて発覚することが多い。しかし、腹部の中央あるいは右上に痛みを感じたり、お腹の張りや、慢性的な疲労感などの症状が出る場合もある。肝臓組織内のビリルビンの増加により、皮膚に黄疸が現れたり、手のひらが赤くなったり、爪の下に白い線が現れたりするケースもある。
複数の症状を発症した場合は一度、医療機関を受診したほうがいいだろう。
医師から「脂肪肝」と診断されても、残念ながら特効薬はない。まずは生活習慣の見直しが必要となる。例えば減量や糖質制限、アルコールを控えること、バランスの良い食事を心掛けることが重要だ。LDLコレステロールの血中濃度が低下する働きがあることから、緑茶を飲むこともおすすめしたい。
さらに、定期的な運動は肝臓が正しく機能することを助けると言われているため、ストレッチや散歩などで体を動かすことも心掛けよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。