ド派手なスーツに破天荒なコメントの数々で球界の話題を独占している日本ハム・新庄剛志監督。その宣伝効果は抜群だが、果たして大田や西川ら主力選手が抜けた穴を若手の成長で埋められるのか。「BIGBOSS流」の指導を徹底検証し、3年連続5位に沈んだチームの2022年シーズンを占う。
21年シーズンは最終盤で西武が2連敗を喫したため、ハナ差で最下位を免れた日本ハム。とはいえ、首位とは14ゲーム差、3年連続5位でBクラスが定位置となった。チームの再建を託された新庄剛志監督(49)は秋季キャンプからすでに、球界の常識をブチ破る様々な練習法をブチ上げ、スポーツ紙の見出しを賑々しく飾った。球団OBでもある野球評論家・角盈男氏が言う。
「タイプは違うけど、長嶋(茂雄)さんや野村(克也)さんと一緒。マスコミをうまく巻き込んでいますよね。それでいて、言葉は悪いけど『単なるバカ』ではない。むしろそういうふうに見られがちなイメージを利用して内外にチームをアピールしながら、実はまっとうな指導をしていると思います」
例えば秋季キャンプ初日の11月8日、グラウンドに乗り入れたワゴン車の上でバットを突き出し、その高さ(約3.5メートル)を超えずに遠投するよう指示するシーンがあった。絵ヅラのインパクトもあって各媒体がこぞって取り上げたが、角氏は続けてこう評価する。
「『ライナーで遠投しろ』と言えば済みますが、選手にすれば非常に漠然とした指示と受け取れる。ああすることで目標が非常にわかりやすくなりますからね。もちろん演出的な意味もあるでしょうが、やっていることは理にかなっています」
さらに、通常ならば「無死一塁」から「二死満塁」まで様々な場面を想定して行われるケース打撃を「一死三塁」だけに限定したことも大きな波紋を呼んだ。この意図についてはBIGBOSS自ら、
「打撃面での集中力についてはもちろんですが、守備にも役立つ。タッチアップの考え、チャージの考え、右中間へ抜けたらカットマンへの送球。全てがミックスされている。『無死一塁』なんかは意味がない」
と答えている。このコメントについて、キャンプを取材した日本ハム番記者はうなずきながら、
「新庄監督は自分のことを『監督兼外野守備コーチ』と言うほど、外野守備に独自の理論を持っています。外野レギュラー候補の淺間大基(25)や万波中正(21)に屋外球場とドーム球場での送球の違いをレクチャーするなど、キャンプ初日から重点を置いて指導していました。現役時のニューヨーク・メッツ時代、契約更改で『補殺数をインセンティブに入れてくれ』とまで交渉した新庄監督の指導ですから、外野守備に関してはかなりのレベルアップが見込めるのではないでしょうか」
21年シーズンの外野手の補殺数でみると、日本ハムは19回と物足りなかった。まずは得意の守備からチーム改革に着手しようというのはナットクがいく話だ。しかし新庄監督はさらに踏み込んで、畑の違うピッチング練習にもBIGBOSS流の「珍指針」を持ち込んだのだ。