1986年の西武ライオンズと広島カープの日本シリーズの戦いは、熾烈を極めた。初戦は「2‐2」で引き分けるが、2戦目以降は広島が3連勝で王手。ところが、5戦目から西武が逆襲に転じた。そして、7戦目に「3‐1」で西武が“逆王手”をかけた形となり、史上初の8戦目は西武が「3‐2」で競り勝ち。森祇晶監督は就任1年目にして西武を日本一に導いたのだ。
この日本シリーズで象徴的に語り継がれるのは、8戦目、西武の秋山幸二氏が6回表に同点の2ランホームランを放ち、ホームベース直前でのバック宙ホームイン。「バック宙」は秋山氏の代名詞ともなったほどだ。
主に広島カープで活躍した元プロ野球選手・高橋慶彦氏のYouTubeチャンネル〈よしひこチャンネル〉の、12月8日付け投稿回に、この「8戦目」に広島の先発としてマウンドに上がっていた金石昭人氏が出演し、この対戦時の話題となった。
実はこの8戦目、3回裏に金石氏が、西武の東尾修氏から2ランホームランを放ち先制した。ところが、後に秋山氏の同点ホームランを浴びたのだが、その前に、先頭の清原和博氏がヒットで出塁。次なるバッターのショートゴロを同チャンネルの開設者・高橋氏が悪送球でダブルプレーを取り損ね、一塁に生きた走者を残したことから秋山氏の同点ホームランにつながったのだという。
日本シリーズMVPだったかもしれない金石氏は、「ダブルプレー取ってくれたらね、ボクの野球人生変わってたかもしれない…」「(取ってくれていたら)もう日本シリーズMVPですよ」
と“恨み節”。すると、高橋氏はこう返した。
「それで良かったやん。そのお陰で14勝取れたわけやん」
と、金石氏がキャリアハイを記録した移籍先の日本ハムでの1992年の14勝を、その悔しさをバネにしたからこそだろうと指摘した。
すると、「ありがとうございます」と金石氏が頭を下げ、動画のスタッフからも笑いがこぼれるといった、気心知れた者同士のコミカルな一幕も見せていた。
ちなみに、この2人がいなければ、秋山氏の「バック宙」も生まれなかったわけだから、まさに“もう一つの裏ドラマ”といったところか。
(ユーチューブライター・所ひで)