我が子と信じていた子供が、妻と他の男との間の子だった──身を裂かれる思いをしているのは、長男の血縁問題に揺れる喜多嶋舞と大沢樹生だけではない。ちまたでもDNA鑑定の結果、悲嘆のドン底に突き落とされた亭主がゴマンといるのだ。実に過酷な「慟哭ドラマ」の実例をレポートした!
「当研究所に『DNA鑑定をしてほしい』という依頼の件数は、ここ5年で2倍以上に増えました。世界的に見てDNA鑑定した件数がピークに達したのは2005年。しかし、『血』より『家』を重んじる日本では見向きもされなかった。それがここに来て、ものすごく増えている。この分野は法整備も進んでおらず、厚労省からは鑑定結果や相談内容は公表しないでほしいと言われています。ですが、1日10件ほどDNA鑑定の件で電話がかかってきます」
こう語るのは、法科学鑑定研究所の櫻井俊彦氏だ。「妻の不貞」を疑い、櫻井氏のもとにDNA鑑定を依頼してくる父親は30代が最も多いという。
「鑑定に来るコアの層は、いわゆる“ゆとり世代”。父親になりきれない人が、ひょっとして俺の子ではないのではないか、と疑って鑑定に見える方がいますね」(櫻井氏)
子連れで来訪する人も多い。5~6歳の子供はDNA鑑定などと言われても意味が理解できるはずもないが、白衣を着た研究員や重々しい研究室の雰囲気から、自分の置かれた状況を察知するのか、作業が終わるまでつぶらな瞳で櫻井氏をジーッと凝視していたという。
毛髪1本から鑑定する場合、「強く引き抜くと白い毛球に付着する毛乳頭の中に存在するDNAを鑑定する」(櫻井氏)ことになり、費用は20万~30万円。ちなみに、毛髪の頭皮の外に出た硬い部分(毛幹)では、正しい鑑定結果が出るのは、わずか3%だそうだ。
離婚アドバイザーの露木幸彦氏のもとにも、最近、DNA鑑定の相談が持ち込まれるようになったという。
「ここ4年くらいですかね。といっても、鑑定の結果、子供と血のつながりがないことがわかり、別れたいというものではありません。多くの場合『妻と離婚したいが子供の養育費を払いたくない。どうやって切り出せばいいか』というものです」
露木氏は、確証がないなら鑑定を思いとどまるようアドバイスしている。
「せっかく、築き上げた子供との関係、父親が母の不貞を疑い、DNA鑑定をしたと子供が知ったら、傷つくのは子供です。不登校、非行にもつながりかねないからです」(露木氏)
それでも鑑定に踏み切らざるをえなかった結果が「クロ」だった慟哭モノの事例を、露木氏と前出・櫻井氏の証言で、見ていこう。