夜の営みがないのに妻が妊娠。しかし、気が強い妻を問い詰めることができず、数年が経過してしまったという悲惨なケースもある。
「夫は不倫相手が妻の元職場の上司だと、うすうす気づいていた。が、確たる証拠が得られないまま子供は小学校に上がった。夫婦仲は一段と険悪になり別居。結局、性格の不一致を理由に離婚してしまいました」(露木氏)
夫は離婚を話し合う調停の場で言った。
「不倫相手が誰なのか、白状すれば親子関係のことは口は出さない。しかし、正直に言わないのなら、僕にも考えがある」
しかし、妻は口を割らないまま離婚。このケースでは、夫はDNA鑑定に踏み切れなかったが、血のつながっていない「我が子」に今も養育費を支払い続けている。
再び鑑定で「クロ」だったケースを紹介すると、関西在住の30代女性は、テニスサークルで知り合った男性と親しくなり不倫関係に発展した。間もなく妊娠が発覚したが、彼女はカトリック教徒だったので、中絶することは教義上できなかった。そして不倫相手は「俺は関係ない」とシラを切る態度をとり、彼女は激怒。露木氏が言う。
「不倫相手に責任を取らせるため、女性は夫に全てを話し、自分から親子関係不存在の訴えを家庭裁判所に起こし、DNA鑑定を行い戸籍を修正。不倫相手に対しても認知、養育費、出産費用を請求し、裁判で決着をつけた。結局、夫とも離婚した彼女は夫、不倫相手の双方から、それぞれとの間に生まれた子供の養育費を受け取り、1人で育てているそうです」
また、栃木県在住の30代の男性は結婚後、妻の性格破綻に悩んでいた。妻はだらしない性格で家事もほとんどせず、家の中はゴミ屋敷状態。しかも、カードで高額の買い物をし、義理の母親からも再三注意される始末だった。だが、夫に離婚の意思はなかった。
「やがて妻が妊娠・出産し、『これで変わってくれるだろう』と夫は期待しましたが、その後も性格は変わらなかったうえ、その子供も夫との間にできた子ではなかったんです。妻は、当初、不倫相手と駆け落ちする勇気もなく『夫の子として育てていこう』と思い、夫に不倫のことを話さぬまま過ごし、数年後、夫婦関係が悪化し、離婚してしまったんです」(露木氏)
離婚後、しばらくして夫に裁判所から呼び出しの手紙が届いた。封を切ると、妻が親子関係不存在の訴えを起こした、とあった。ずっと我が子だと思って育ててきた子は実は他人の子。ついてはDNA鑑定をしてほしいという身勝手な言い分だった。夫は激怒し、その後、気持ちの整理がつかず放心状態だったが、「もう、あんな頭がおかしい女と関わりたくない」と結局、鑑定に同意したという。
こうして見てくると、男性は、子供が自分と血縁関係がないと判明した場合、子供とは離れて暮らすことになることがほとんどのようだが、中にはこんなケースもある。櫻井氏が言う。
「DNA鑑定をして、子供との血縁関係がないことをハッキリさせたうえで、『これで浮気した女房を家から叩き出してやる!』と言った男性もいました。血のつながりの有無は愛情に関係ないと言うんですね」
不貞の妻と縁を切り、血のつながらない「我が子」と2人で暮らそうというのだ。何ともやりきれない話だが、露木氏がこう締めくくる。
「妻が浮気をする一因には、現代のストレス社会もある。ストレスがあるから一夜かぎりの関係に身を任せ、夫以外の男性の子を宿してしまう。こうした状況では、これからもDNA鑑定が絡む離婚劇は減りそうにありません」
「大沢樹生症候群」の妻子持ちも、ますます増えそうな情勢なのである。