正月早々、帰省客を混乱に陥れたJR有楽町駅近くで発生した大規模火災。東海道新幹線が一時全面運休になるなど“交通パニック”になったのも記憶に新しい。そこで気になるのが、「交通賠償金」。火災での延焼や人身事故での鉄道会社への支払いはどうなっているのか。その実態に迫った。
正月3日の早朝、JR有楽町駅(東京都千代田区)周辺が炎と煙に包まれた。火元となったのは、駅近くにあるパチンコ店内の水槽だった。隣接するゲームセンターとの間の通路に設置された、水槽の電気配線のショートが原因だという。取材をしていたジャーナリストが言う。
「火災では周辺店舗など約955平方メートルが焼けたばかりか、火災の影響で東海道新幹線の東京─品川間は5時間以上運行ストップ。故郷や行楽地で過ごした帰省客のUターンラッシュと重なり、鉄道利用客ら約32万人に影響が出ました」
東海道新幹線を管轄するJR東海も、「沿線火災としては新幹線開業して以来初めて」という大損害を受けただけに、今後、交通賠償金を火元のパチンコ店に請求すると見られているのだ。全国紙社会部記者が言う。
「JRでは、行き先の駅まで着いたとしても、到着予定時間から2時間以上遅れた場合、特急料金を払い戻す規定があり、火災当日の3日は東京駅だけでも約4000人の払い戻しがあった。1件当たり1万円で計算しても4000万円の損失です。払い戻し期限は1年以内なので、今後も損害額は膨らむはず。さらに、同新幹線の通信ケーブルも損傷。防音壁の一部も焦げたため、JRは損害額がまとまった時点で、賠償請求を検討するようです」
損害額は億単位に上ると見られるだけに、火元となった当事者側は“火消し”に躍起だ。
「火元となった水槽はパチンコ店が所有していますが、管理をメンテナンス会社に委託していたようで、パチンコ店側は『年末の点検では異常がなく、過失はない』と説明しています」(前出・社会部記者)
この「過失」責任こそが今後、JR側がパチンコ店側に賠償請求を求める際の焦点になるという。みらい総合法律事務所の谷原誠弁護士が解説する。
「火災には『失火責任法』という法律があり、失火による火災の場合は、火元の重過失が認められた時のみ賠償責任を負います。明治時代に制定された法律で、日本は木造家屋が多いため失火者の責任が過大になることに配慮されています」
つまり、失火原因に注意義務を怠っていないかぎり、火災で巻き込んでも損害賠償の責任は問われないのだ。だが、民事のみならず失火罪や業務上失火罪といった刑事責任に問われる可能性もあるだけに、有楽町火災の失火責任については、まだまだ解決までに時間がかかりそうだ。