いよいよ2月9日に投票を控えた都知事選だが、選挙戦の主役となっているのが小泉純一郎元総理だ。連日、その勇ましい一挙手一投足が報じられているが、ちょっと待て! 密着した記者の目に映っているのは、かつてのギラギラしたオーラなどまるでない、ヨボヨボに老いたライオンの姿ではないか。
「大勢お越しいただきまして、足を止めて耳を傾けている姿を見ますと、本当に感動しております」
1月29日、東京の吉祥寺駅前北口で聴衆に向かってこう語りかけたのは、小泉純一郎元総理(72)である。小泉氏の「感動しております」のセリフに周囲からはクスクスと笑い声が漏れていた。
都知事選に出馬した細川護煕〈もりひろ〉元総理(76)を引き継ぐ形で始まった応援演説に、約2000人の聴衆が耳を傾けたのだった。
この日、小泉氏は隣接する三鷹駅北口で午後2時から演説を行っている。2人の元総理のタッグとあって、ものものしい数のSPや警察官がフル装備で警護に当たっている。
目下、都知事選は、細川氏と舛添〈まずぞえ〉要一元参議院議員(65)との一騎打ちと報じられているが、政治部記者が情勢を解説する。
「今回、小泉さんは原発ゼロを訴えるべく細川さんを応援しています。選挙序盤の出口調査などでは、舛添さんがダブルスコアの圧勝でした。しかし、このことで舛添陣営が大幅に緩み、結果、演説に有権者が集まらない状態が続いているのです」
突然の閑古鳥状態に慌てた舛添陣営は、1月29日に安倍晋三総理(59)らの応援投入を決めたという。一方、1000人単位の人を集める小泉節は健在で、こうぶち上げるのだった。
「(私が)無責任で愚かなことは(原発に代わるエネルギーの)代案を出さないことだと言います!(しかし)私が1人で代案出せるんですか?出せるわけないじゃないですか!」
しかし、選挙戦開始からわずか1週間にして、小泉氏は鼻声で、声もかれて聞き取りにくい。ライオンの異名を取った以前の勇ましい姿とは違い、いやが上にも老いを感じさせてしまうのだ。
以前であれば、小泉氏が「自民党をぶっ壊す!」と気勢を上げれば、有権者たちが声を上げ、嵐のような拍手を送ったものだった。しかし、小泉・細川氏のヨボヨボすぎる姿に、訪れた人たちはただただもの珍しさに足を止め、賛同というよりは冷笑を浴びせているのみであった。
三鷹の演説で、小泉氏はこう自嘲気味に語っている。
「皆、何をいまさらと、引退した70過ぎた老人が何でのこのこ出てくるんだ? と言われる。(略)立候補すればもうケチョンケチョンに言われるわけですよ」
いまひとつ熱気に欠ける選挙運動だが、メディアでは連日「小泉旋風」が吹き荒れているかのように都知事選を報じている。前出・政治部記者が明かす。
「現在は安倍政権の支持率が安定しすぎて対抗勢力がいない状態です。国民も安定を望んでいるのか、安倍さんの悪い話を書いてもウケがよくない。そこで、小泉さんを持ち上げ、何とか安倍さんとの対立構図を作り、政治ネタを盛り上げたいのです」
徐々にアクションをつけながら聴衆をあおる小泉氏だが、その動きはやはり以前のキレを失っていたのだった。
◆アサヒ芸能2/4発売(2/13号)より