魚網には網とヒモの部分があり、網の材料はポリエチレン(PE)、ヒモはポリプロピレン(PP)である。A氏は買い取った魚網をPEとPPに分類し、資源材料としてベトナムに輸出している。PEは溶かしてゴミ袋などに加工でき、化学繊維やプラスチックになるPPもフライパンの取っ手や各種インテリア用品などに加工されるという。A氏は「東北にはPEが500トン、PPは2000トンがストックされている」と明かすが、ここに悪徳中国人が絡んでくるのである。
彼らは日本に貿易会社やその子会社を作り、A氏のようなリサイクル業者に接触してくる。買い取りたい、ということだ。ところが、そのやり方が狡猾。A氏が渋い顔で言う。
「まず、サンプルを見せてくれ、と言う。で、渡すと『1キロ程度のものではなく、もっとデカいのを見たい』と要求してくる。写真を撮って見せてやろうとすると『(魚網の山の)全体的な画像が見たい』あるいは『現物を見たいので現場に連れて行ってくれないか』とエスカレート。この要請をそのままのんで、背景がわかるような全体像の写真を送ってしまうと、彼らはその風景などから場所を特定し、勝手に現地に行ってしまいます。いわんや、現場に連れて行くなどもってのほか。もし現場に行かれたら、(除染した魚網を管理する下請け業者に)直接交渉されるからです。中国人は現ナマをポンと置いて『今すぐ買います』と言う。現金を見せられたら、業者は売ってしまいます」
A氏のようなリサイクル業者を飛び越え、直談判の現金闇取り引き。これでは日本人はお人よしの使いっ走りで終わってしまう。
「彼らは日本の業者を、自分たちの金儲けの道具としか思っていません。いいように利用されたあげく、まんまと横取りされ、利益を全部中国人に持っていかれた日本の業者はいっぱいいる。私はその二の舞にはなりません」(A氏)
こうした外国人の「津波ゴミ闇ビジネス」を、被災地は把握しているのか。複数の自治体に問い合わせたところ、気仙沼市からは「本市は把握しておりません。有力な情報でしたら警察署に連絡願います」との回答があった。
被災者の神経を逆なでする略奪商売。こんな連中の横暴を許すべきではないだろう。