オランダの金融機関の試算によると、急増している中国の牛肉消費量は25年までに、年間220万トンに達するという。これは、ハンバーグ190億食分に相当する量だという‥‥。
空前の牛肉ブームの中、“裏ルート”で中国の都市部に大量流入し、消費されている和牛肉だが、その生産量は年間約50万トン。農家の後継者不足などの問題もあり、今後はさらなる減少も想定されている。つまり、需要が供給を大きく上回り、「日本産の和牛を食べたくても食べられない」という品薄化が進む可能性が高いのだ。
結果、こうした事態を見越した中国の犯罪集団は、従来の密輸に代わる仰天手法でブランド和牛の強奪、量産化を企てていた。
「日本の農産物のコピーを作るんですよ。すでに中国では、山梨県などで生産されている高級ブドウ『シャインマスカット』が無断で栽培されている。それと同じで、日本産の和牛の精子と受精卵を盗み出し、中国に“コピー牧場”を作って、自国での大規模生産をもくろんでいるんです」(農水省関係者)
ブランド和牛流出工作事件の発覚は、昨年7月に遡る。自称大阪府在住の日本人男性が、高さ約40センチほどのガスボンベのような形状をした特殊な冷蔵容器に入った和牛の受精卵数百個とストロー状の容器に入った精液を、大阪港から持ち出したのだ。この一件は上海港の税関で発見されたため、流出は未遂に終わっている。農水省の聴取に対して、この男性は「知人に頼まれた」などと説明したという。
「同じような事件は頻発しているんだ。昨年12月にも、福岡空港から上海行きの飛行機に乗った中国人の男が和牛の受精卵と精子を持ち出そうとして、保安検査で見つかって、その場で没収されたって。でも捕まるわけでもなく、厳重注意で終わるんだ。その男が保管されてた精子を盗んで持ってきたかどうかなんて、わかりゃしないからな」(ヤクザ幹部)