ニセモノの人気キャラクターや高級ブランドのコピー商品など、大量の模倣品や海賊版が氾濫する“泥棒大国”中国。なんと日本が誇る高級食材の強奪までが着々と進行しているというではないか──。
中国といえば、つい先日も政府機関が任天堂の人気ゲームキャラクター「スーパーマリオ」を無断で使用したPR動画をSNS上に配信していたことが発覚している。本来ならば、著作権侵害という違法行為を監視するべき立場の国家が、取り締まるどころか、逆に先導して“パクリ”を啓蒙しているようなのである。
まさに、ぬすっとたけだけしい行為を繰り返す中国において、今度は日本の食材を標的にした闇ビジネスが進行しているという。世界中のグルメたちから高い評価を受ける日本産の「ブランド和牛」を模倣する動きが活発化していたのだ。
その背景には、近年、中国で牛肉の消費量が急増している事実がある。中国駐在経験がある商社マンが語る。
「人口の大半を占める漢民族など、もともと中国では牛肉を食べる習慣はあまりなかったのですが、90年代以降の高度経済成長によって、都市部に暮らす富裕層を中心にライフスタイルが一変したんです。食の欧米化により、牛肉の需要が右肩上がりに急上昇しています。上海のデパートでは1キロあたり6万円もする豪州産の高級牛肉を販売していますし、外資系ホテルのステーキハウスも繁盛しているんです」
こうした中、中国の富裕層の間では、日本産のブランド和牛の認知度やニーズが高まりつつある。
その一方で現在、日本からの和牛肉の輸入は解禁されていないのだ。
「中国政府は、01年に日本で狂牛病騒動が発生して以来、日本からの牛肉輸入を禁止しています。そこで、日本に旅行に来た中国人が手荷物として、こっそり日本の国産牛を中国本土に違法に持ち込み、富裕層に高値で転売しているんです。本来は中国では目にするはずがないのに、闇市場では売買されているし、提供するレストランも普通にあります」(商社マン)
昨年1月には中国・福建省の国際空港で、日本発の旅行客の荷物から実に178.5キロにも及ぶ、冷凍された和牛が発見され、中国当局が押収するという事件もあった。日本発着便を運航している中国各地の国際空港では毎年、数十キロの和牛が押収されているという報告もある。
和牛密輸の手口について、中国人犯罪事情に詳しいヤクザ幹部が明かす。
「日本に来た中国人旅行客がスーツケースの奥に忍び込ませたりして、手荷物として持って帰るケースもあるけど、蛇頭をはじめとした中国の犯罪集団が組織的に行ってるよ。押収されるリスクはあっても、和牛の人気は他国産と比べて群を抜いていて、中国では買い値の10倍以上で売れるからね。それに少量なら、空港の保安検査をすり抜けられる確率が高い。主に日本に滞在している中国人留学生がアルバイト感覚で運び屋をやってるよ。覚醒剤とって、見つかっても押収されるだけで、逮捕はされないからな。まんまと持ち運ばれた和牛は『松阪牛・A5ランク』って表記されて、闇市場に出回る。実際はA4ランク以下の和牛を偽装表示してるんだ。ただ、旅行客を装って持ち運ぶのは、どうしても量が制限されちまうっていう難点があるよな。だから最近は、別のやり方が横行してるんだ」
中国の犯罪集団のシノギとなっているのが、覚醒剤や拳銃の密輸だ。こうした運びのノウハウを活用することで、和牛が中国本土に大量上陸し、都市部において流通しているというのである。
「あいつらは冷凍マグロの中に覚醒剤を入れたり、巧妙な持ち運びの手口を知っている。和牛を大量に持ち運ぶのだって簡単だよ。最近はまず船便で一度、カンボジアに運んで、『カンボジア産』って記載された箱に入れ替えるんだ。さらにそこから、ベトナムなんかの東南アジア諸国を経由して、上海港や深セン港に届けられる。カンボジア国内で和牛なんか流通してないよ。カンボジアに輸出されている和牛は、ほぼ100%、中国人富裕層の胃袋に収まってるな」(ヤクザ幹部)