MCとして頭角を現し、“中堅層”を飛び出した麒麟の川島明。そんな実力派の彼が驚き、うらやましく思っているのが、実は平成ノブシコブシの吉村崇なのだ。
「この春からね、いろんな芸人さん、かまいたちとかね、第7世代と呼ばれる方、霜降りとかもいっぱいいる中で、一番この春から忙しなるのは、吉村やと聞いてます。もう各局、マジで吉村の取り合いらしいですよ」
と、前のめりに語る。とはいえ吉村といえば、テレビで毎日のように見かけるものの、特に面白いことを言うわけでもなく、地味な配役の1人に見えてしまう。川島も、
「ホンマに吉村ぐらいじゃない? 賞レースで結果を残してないのに、この認知度は…」
と、吉村の「実績」が飛び抜けていないことは認める。共演の多い有吉弘行も、
「テレビで見てると、おもしろくないだろうしね。イライラもするし、うるさいだろうってこともよくわかってんだけど…」
と話し、バラエティ番組「ゴッドタン」(テレビ東京系)などを手掛ける演出家の佐久間宣行もやはり、
「昔は、ガッツリ腕のある芸人が好きだったから、吉村を軽く見てた時期もある」
と、吉村の印象が最初こそ好ましいものではなかったとしている。
ではなぜ、彼が引く手数多なのか─。川島がこう明かすのだった。
「結構、実験的なライブを下北沢でやった時も、吉村さんにはよう出てもらうんですけど。僕は最高のチェイサーやと思ってます。酒(目立つ芸人)がいっぱいいるんで。でも、酒だけではみんなすぐ倒れたりするんで。でも、そこに吉村さんっていうチェイサーが来ると、ライブがスムーズにいくんですよ。酒じゃないんです。でも、水はいるんです」
出ずっぱり芸人には、それなりの理由があるようだ。
(この項続く)=文中敬称略=
坂下ブーラン(さかした・ぶーらん)=筆名=:1969年生まれのTVディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティ番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発をめざし奮闘中。