前回、「東京03恫喝事件」の真相がポツポツと語られる時代になってきたと書いた。お笑いトリオの東京03が09年の「オールスター感謝祭」(TBS系)本番前に挨拶を欠いたことで、島田紳助氏(2011年に芸能界を引退)が激怒し、本番中に「お前らなめてんのか!」と詰め寄り、揉み合った一件だ。
当の東京03の角田晃広は当時について、こう反省している。
「『キングオブコント』で優勝して、ウキウキで行きましたからね。優勝したからこそ呼ばれたお祭りだったんです」
と、浮き足立っていたことを認めている。挨拶を欠いてしまった理由としては、感謝祭への出演者が大勢のため、逆に挨拶に行くのは失礼になるかもしれないという判断だったそうだが、実は、その決定に影響力を及ぼした芸人がいた。アンガールズの田中卓志だ。
田中はこの事件に関わったことをまったく覚えておらず、最近思い出したといい、こう後悔を口にしている。
「あの時の前室、03さんと一緒だったんだけど。『紳助さんに挨拶に行ったほうがいいかな?』って俺に聞いて。俺、『行かなくていい』って言っちゃった。でも、本当にこのことは忘れてたの。飯塚(悟志)さんにこの間会った時に、『なんか前室で田中君に言われたような気がするんだけど』って言われた瞬間、鮮明にそのシーンが戻ってきて。申し訳ない。大事件になっちゃった」
とはいうものの、紳助氏の兄弟子にあたる島田洋七によると、たった1回の無礼だけではなかったようだ。
「東京03と何回も会って、アレやったから言ったらしい。楽屋の前でも会って、トイレのとこでも会って、本番中でも目が合って怒った。紳助、彼らをそんな知らんもん。何かないとさ、いきなり会って『ワーッ!』とは行かへんやん。それなら紳助ただのノイローゼやで」と擁護していた。
紳助氏は東京03を殴ったかのような激昂ぶりだったと伝えられているが、実際のところ、メンバーの豊本明長は「殴られてないしね」と言い、オードリーの若林正恭も「殴られそうになって下向いてた」と証言している。
感謝祭の一晩でのギャラは2000万円だという。もしかしたら、興奮する紳助氏の頭にも、さすがにそのことがよぎり、ギリギリのところで抑止力が働いていたのかもしれない。
坂下ブーラン(さかした・ぶーらん)=筆名=:1969年生まれのTVディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティ番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発をめざし奮闘中。