肩の痛みといえば「四十肩」や「五十肩」が一般的だろう。ところが深夜にズキズキと痛み出したら「腱板断裂(けんばんだんれつ)」を疑ったほうがいい。
腱板は、肩の関節を安定させる働きを持った4つの筋肉の総称で、肩関節にある腱板が裂けると発症する病気。主な原因は転倒や衝突などの外傷だが、「加齢」が原因で発症する場合も多い。特に40歳以上の中高年男性に多く見られ、右肩に発症しやすい傾向がある。
実際の症状としては、肩が上げにくい、肩の痛みを感じる、肩を上げる際にゴリゴリ音がするなどが挙げられる。これは、肩を動かす際に、腱板の損傷している部分が周囲の骨に当たることにより、肩の痛みが生じるからだ。特に注意してほしいのは夜間の痛みだ。この症状が医療機関を受診するケースで最も多いといわれている。
痛みの症状が「五十肩」と間違えやすいが、違いは、痛みがいつまでも続くことや、関節の動きが硬くなることは少ない。また、手を挙げる時にカが入らないなどの症状もある。
「腱板断裂」は整形外科を受診したほうがいいだろう。レントゲンでは腱板が写らないため、正確な診断はMRI検査を行うことになる。超音波検査も有用とされ、最近では、超音波検査のみで診断されることもある。「腱板断裂」と診断されたら、断裂部分が自然治癒することはないが、全体の7割程度は、保存療法で症状が改善する。
治療法は、肩の周囲の筋肉を動かすリハビリなどを行うほか、腱の周りに滑りをよくするためにヒアルロン酸注射をする。痛み・炎症を抑えるために局所麻酔剤のステロイド注射を打つ場合もある。通院治療でも痛みが軽減しない場合は、断裂部分の縫合手術を行うこともある。放置すると悪化するため、肩の痛みを感じたら医療機関を受診しよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。