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誤って24歳の男に振り込まれた、山口県阿武町の給付金4630万円事件。万が一、自分のところに送金されたら、出来心が芽生えないとは断言できません。いったいどんな罪になるのでしょうか。
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他人のお金だと知っていて使うことを、ネコババといいます。いわゆる詐欺罪でしょう。自転車だって、ボロボロのものが道端に捨ててあったとしたら、どうしますか。捨てられているから乗って帰ろう、というのも窃盗になりますよ。
もちろん、振り込んだ役所も悪いんです。ホント、お役所がバカすぎます。新人が間違えて振り込んだと報道されていますが、大切な公金を新入りに任せっきりにするのがおかしい。町長にこそ責任がありますし、被害者ヅラして町長が会見しているのも腹立たしい限りです。
結局、阿武町は法的な手続きによって、9割超の約4300万円を確保できたといいます。町は田口翔容疑者が利用していた3つの決済代行業者の口座を国税徴収法などに基づいて差し押さえ、なんとか回収に成功。阿武町は回収に躍起になり、得意げですらありました。しかし、かける労力と手間‥‥お粗末極まる時間のムダです。
そもそも阿武町といえば、平成の大合併の頃に、阿武郡のほとんどが合併して萩市となったにもかかわらず、合併しなかったところ。人口3089人(3月末現在)という過疎化により、消滅が危惧される自治体のひとつとなっています。合併していた方がよかったのではないでしょうか。
この合併騒動の際には基金(地域のために使う投資金)の分配方法でモメたようですが、目先のことしか考えない役人が多いのでしょうね。行政の体たらくぶりが露呈しました。全国の役所は阿武町を反面教師として再度、お金の管理体制をチェックして下さい。
そうそう。5月22日に「サンデー・ジャポン」に出たのですが、スタジオ出演されていた経済学者の成田悠輔さんが「こんなことで、これほど騒ぐことあるの?」とコメントしていました。そりゃ、騒ぎますよ。アメリカのイェール大学助教授をしていると、いろいろと守られた優雅な生活かと想像しますので、彼にはきっと行政に裏切られた(ような感じの事件ですよね)国民の気持ちなんてわからないのでしょう。実際、この阿武町の事件は放送すると視聴率が高いらしく、それだけみんなの関心があるということです。
さて、今回のテーマですが、そんなこんなで人のものをネコババすると、決していいことはありません。うっかり4630万円を使って高級な時計などを買っていたとしましょう。その場合は時計を換金して、足りない分が発生したら、一生涯かけて支払っていくことになります。
思うに、拾ったお金は拾得者が5~20%の報労金をもらえる、という規定があるじゃないですか。間違って振り込んだケースでも、報労金があってよかったのでは。
誤送金が発覚した時点で、役所がいくらか払ってあげていたら、彼は犯罪に手を染めなかったかもしれませんよね。正当なお金をもらいましょう。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ)◆1981年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、日本生命などを経て12年に衆院議員に(京都3区)。16年に議員辞職後は、経営コンサルタント、テレビコメンテイターなどで活動。近著に「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」(徳間書店)。