6月18日、WHO(世界保健機関)は、アフリカ由来とされる「サル痘」の感染者数がついに2000人(世界42カ国合計)を超えた、と発表した。
そんな中、イタリアとドイツで感染者の「体液」から「サル痘ウイルス」が検出されていたことが判明。今後、サル痘の感染は性行為を介した「性感染症」として急拡大していく可能性があるとして、世界に衝撃が広がっている。
ウイルス感染症に詳しい専門家も、次のように指摘する。
「もともとサル痘については、男性と性交渉を持った男性の感染が数多く確認されていましたが、今回の欧州での報告は、男性間性交渉による感染のリスクを裏づける科学的証拠と言っていいでしょう。しかも、男性感染者の体液からサル痘のウイルスが検出されたということは、女性感染者の分泌液からもウイルスが検出される可能性がある。すなわち、サル痘が新たな性感染症に指定される可能性が出てきた、ということになります。そうなった場合、男女間の性行為は万国共通の日常的な営みですから、サル痘のパンデミックを終息させることは非常に難しくなるでしょう」
加えて、イタリアのラザロ・スパランツァーニ国立感染症研究所は「サル痘ウイルスは感染者の体液中に生殖可能な形で存在する可能性がある」とも指摘しているのだ。
「体液中に生殖可能な形で存在するということは、サル痘ウイルスに感染した体液が卵子に入り込む、ということを意味しています。この場合、ウイルスが生殖可能な形で存在する期間はどれくらいなのか、さらに感染受精卵は母体や胎児にどのような悪影響を及ぼすのか。現時点では全ての可能性を含めて不明とされていますが、コトは生殖に関わる問題だけに、重大かつ深刻です」(前出・ウイルス感染症の専門家)
日本国内への流入時期も含めて、サル痘の動きには細心の注意が必要となる。
(森省歩)
ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1961年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。出版社勤務後、1992年に独立。月刊誌や週刊誌を中心に政治、経済、社会など幅広いテーマで記事を発表しているが、2012年の大腸ガン手術後は、医療記事も精力的に手がけている。著書は「田中角栄に消えた闇ガネ」(講談社)、「鳩山由紀夫と鳩山家四代」(中公新書ラクレ)、「ドキュメント自殺」(KKベストセラーズ)など。