「エイズ感染九州で激増」福岡ソフトバンク・ホークスが2年ぶり優勝を決めた週明け、地元紙1面に驚愕の見出しが躍った。はたして、今なぜ「九州」なのか──。
9月19日付の西日本新聞の1面を飾った調査報告は、九州男児にとってはまさに寝耳に水。祝賀ムードも吹っ飛ばす内容だった。記事によれば、2016年に福岡県で新規に報告されたHIV感染者は46人、同じくエイズ患者も46人、計92人の感染が認められたという。この数は過去最多のもので、前年比では実に161%という激増ぶりだという。また、近隣の佐賀県でも計9人、熊本県も計19人と過去最多を計上し、九州が危機的な状況にあると警鐘を鳴らしているのだ。しかも、感染ではなく、発症してから報告される「いきなりエイズ」の割合は全国的には約3割程度にとどまっているにもかかわらず、福岡県では半数の5割と突出していることも、エイズ感染の拡散脅威を感じさせる。
この記事を受け、ネット上では即時に、
〈九州には同性愛者が多いからだ〉
〈地理的にアジアから来た感染者から広まった〉
〈九州を封鎖せよ!〉
など、根拠不明や憶測まじりのさまざまな書き込みが行われ、さながら大パニックとなっているのである。
この調査報告の数字について、感染症学が専門の中原英臣医学博士が説明する。
「数字だけでは本当に患者が増えているのか、それとも検査を受けている人が増えているだけなのか、ハッキリしません。ですが、感染者ではなく急に発病する人が増えているとなると、実際に病気が増えているのではないか。なぜ九州なのか原因はわかりませんが、局地的に流行が起こっている可能性はあります」
これに対し、県内最多となる計63人という報告数を出した福岡市を直撃すると、保健福祉局健康医療部保健予防課の担当者が状況を説明する。
「実は、この1年前の15年の報告数は計27人とかなり少なかった。そのため、増加率がハネ上がったのです。つまり、一昨年にきちんと検査を受けておらず、昨年にいきなりエイズを発症したケースが数字に反映されたのではないかと見ています」
はたして、“エイズ急増”は数字上だけのトリックなのだろうか‥‥。