近鉄バファローズ一筋20年の左腕・鈴木啓示氏は、317勝という偉大な功績とともに、被本塁打560という日本プロ野球記録も持っている。2位の山田久志(490)、3位の東尾修氏(412)を突き放し、メジャーのジェイミー・モイヤーの522をも上回る世界記録である。
その鈴木氏が、最大の屈辱を味わったホームランとして挙げたのはルーキー時代、プロ野球史上2人目の三冠王・野村克也との対戦だった。YouTubeチャンネル〈日本プロ野球名球会チャンネル〉でその時の状況を明かすには、
「投げた、カーン打った、(ボールが)日生球場の外野スタンドを跳ね上がって。(野村は)私の方をバッターボックスから見て『入ったやろ』って、それから一塁に走り始めるんですよね」
汗もかいていないのにマウンド上で額の汗を拭うフリをしたり、ほどけてもいないのにスパイクの紐を結び直すなどして間を持たせようとしたが、
「通常の選手がそれでもうダイヤモンド1周するところ、野村さんはまだ二塁ベースあたりをヨチヨチヨチヨチ歩いてる。屈辱の時間が普通のバッターの2倍、3倍ありましたよ」
その結果、練習に打ち込んで培ったのが、アウトローのコントロールだったそうで、通算78無四球試合という、こちらもプロ野球記録を打ち立てている。
去る7月6日、西武の中村剛也がオリックス戦で、通算1956三振を喫した。それまでのプロ野球記録だった清原和博の1955を上回り、むしろ名誉なことと話題となった。
現役最多となる6度の本塁打王は、王貞治(15度)、野村克也(9度)に次ぐ歴代3位。スラッガー・中村だからこそ到達できた極みであり、鈴木氏に相通じるように思える。
(所ひで/ユーチューブライター)