「体力の限界…気力もなくなり、引退することになりました」
「ウルフ」の愛称で親しまれた、第58代横綱・千代の富士。91年5月場所の初日、後に平成の大横綱へと成長を遂げた貴花田(後の貴乃花)に寄り切りで敗れ、3日目の取組後に行われた引退会見での言葉だ。
「自分が思うには、初日に貴乃花と当たったでしょ。負けて、もうダメだなって思ったら引退…まだそこには気力があったのかなと思って」
8月16日、自身のYouTubeチャンネル〈貴闘力部屋〉でこう振り返るのは、千代の富士にとって最後の対戦相手となった貴闘力である。
2日目の板井戦でかろうじて星を拾った千代の富士は、3日目の土俵に上がる。
「3日目、オレとやった時まで、まだ気力があったと思う」
土俵に上がっていることこそが気力の表れだと、貴闘力は言うのだ。
決まり手となった「とったり」を仕掛けた際に、千代の富士の腕が、
「ボキッて音がしたの」
肩が外れたか、あるいは折れたのか。貴闘力が「休場かな」と思っていたところ、その晩の引退会見となったというのである。
今年4月19日、ツイッターのユーザーが千代の富士の写真を2枚添えて「カッコイイと思って思わず保存したけど、なんていう名前の力士なんですかね。無知ですみません」と投稿。それを受け、千代の富士の次女でモデルの秋元梢が「うちの父です。ありがとうございます」と対応。昭和の大横綱が令和の時代に、ツイッターのトレンドに上がったのだ。
(所ひで/ユーチューブライター)