またしてもこのセリフが飛び出した。
「死刑になりたかった」
8月20日夜、東京・渋谷区円山町の路上で母娘2人を刃物で刺す事件を起こして逮捕されたのは、埼玉県戸田市の中学3年生の少女。取調べに対し、この少女は「母親と弟を殺すつもりで、予行練習のために刺した」と供述しているという。と同時に、冒頭の言葉も…。
これまでも「死刑になりたかった」との動機から大事件を起こした人物は多々いる。
今年初め、東京大学前の路上で刃物を振り回して通行人に重軽症を負わせたのは、高校2年の少年だった。
21年には、京王線の車内で放火し、刃物で乗客を切りつけた男もいた。
今回のような、無差別に狙った犯罪では08年、土浦通り魔事件も。犯人の男は「自死する勇気がなかったので、殺人を犯した。早く死刑になりたい」と話したという。社会部記者によれば、
「このほか、そうした事件は枚挙にいとまがありません。当然ながら肯定されるべきことでは決してありませんが、仮に死にたいならば、自死の道を選べばいいという論理になる。なぜ関係のない人たちを巻き込んで、死刑という言葉を口にするのか、常人には理解に苦しみますね」
それは例えば「自死する勇気がなかった」という土浦通り魔男の身勝手な言葉に現れているが、そんな論理を消滅させる方法はないものか。
「日本には死刑制度がありますが、廃止論も根強く渦巻いている。もし死刑制度をなくしてしまった場合、自動的に『死刑になりたかった』という動機は成り立たなくなりますね。その場合、『無期懲役になりたかった』という輩が出現するのかどうか…」(犯罪心理学研究者)
死刑制度をめぐる議論は今後も続くだろうが、改めて考えさせられる事件である。