10月11日。動物病院を12時に予約し、ジュテをキャリーバッグに入れて出かけ、背中から補液だけを入れてもらった。体重を計ったら、3.7キロ。2日間で140グラムも減ってしまった。ジュテを診てくれているK先生の表情も暗い。
「ジュテちゃん、頑張っているのにねえ。呼吸数を計ってみましょうか」
呼吸波は通常、1分間に40回だという。
「苦しいと、当然ですが、早くなります。ジュテちゃんはゼイゼイと、ちょっと苦しそうな呼吸をしていますね」
猫はこういうところが、傍目からは全くわからない。
「呼吸が苦しい時はどうすればいいですか」
と聞くと、K先生はパンフレットを取り出した。
「ペット用の酸素室をレンタルしているんです」
K先生が説明を始める。パンフには箱の写真が二つ載っている。
「酸素を送り出す装置があって、それをプラスチックの酸素室に送り込む。酸素室に入った猫が酸素を吸うと、かなり呼吸が楽になります」
人工呼吸器を口元に当てて息をする、人の酸素吸入とは異なるようだ。
「奥に酸素室があるので、見てみますか」
アキコ先生や看護師、それから猫や犬のケージがある中を入って行った。「これです」と言われて、目の前にある箱を見る。なんとなくイメージすることはできた。
「でも、この中に大人しく入っているものですか」
「最初は嫌がったり、すぐに出たがったりするみたいです。でも、しばらくいて呼吸が楽になるのがわかると、自分から入るようになる猫(こ)もいます」
なるほど、そういうものなのか。ジュテはどうだろうか。素直だから、すんなり入ってくれるかな。
値段も確認する。基本料は使用する日数に関係なく5500円。ケージの大きさによって1日のレンタル料が異なり、小さいサイズは1100円、大きいサイズは1650円。ケージなしもあり、その場合は1100円。ケージなしは、送り込まれた酸素をそのまま口に当てるのだろうか。
「ジュテの場合は大きいサイズですかね」
「それは業者さんに相談してみた方がいいかもしれませんね」
料金はその他に、配達料と回収料がかかる。
「業者さんが自宅まで持って来て、使わなくなったら取りに来てくれます」
ジュテが本当にこの酸素室を使うようになるのだろうか。病気がわかってからは何から何まで初めてのことが多く、戸惑うばかりだ。
受付に戻って、先生の話を聞く。
「今日は140グラム減りましたが、ある程度で止まったり、やや増えたりしながら、ある時からガクッと減ることもあります。それを繰り返すことが多いんですよ。ジュテちゃんの場合は、最後は3キロを切る可能性もあります」
ジュテを診てきた先生が、淡々と説明してくれた。
「肺に腫瘍がありますから、おそらく呼吸も苦しくなります。酸素室の業者さんには一度連絡して、確認しておいた方がいいかもしれませんね」
自宅に戻ったが、その間、ジュテは一度も鳴き声も上げなかった。
(峯田淳/コラムニスト)