S動物病院のK先生には原宿の病院の予約をお願いし、ジュテをキャリーバッグに入れ、自転車で帰宅した。その距離は7、800メートルほど。自転車で数分である。これからジュテを乗せて何往復することになるのだろうかと、ぼんやり考えた。
ジュテは抗生剤などが入った補液を背中から注入してもらったことでいくぶん元気を取り戻し、「銀のスプーン」の缶詰と「シーバ」のカリカリを少しだけ食べた。それからは寝室のベッドで、夕方まで丸くなって寝ていたようだ。
仕事に出かけ、帰宅して寝室を覗くと、そばには弟猫のガトーが寄り添うようにしている。猫同士でやはり感じるものがあるのだろう。妻のゆっちゃんに聞くと、夕方、シャケを焼いてあげたら、ちょっとだけ食べてベッドに戻ったという。
ジュテの病気や動物病院をネット、スマホで調べてみる。何もしないでいると、余計に不安だけが広がるようで落ち着かないのだ。
ゆっちゃんが見つけた、ゴッドハンドがいると評判の「N獣医」もチェック。翌日さっそく、電話してみたのだが、血液を培養して腫瘍をなくす方法があるというようなことを言われ、何のことだか全然わからない。しかも、体力がないと難しい治療法とのこと。予約がいっぱいで、受診は数カ月待ちとも。こちらは一刻を急いでいるわけで、それでは話にならない。やはりS動物病院にお願いして病院を紹介してもらうのがベスト、というのが結論だった。
S動物病院が予約してくれたのは、M医療センターだった。受診予定日は9月28日。それまで1週間もある。この期間は長かったような短かったような、今から思うと、ボーッとしていた気もする。日に日に元気がなくなるジュテは大丈夫かと思いながら、少しでも食べさせようと必死だった。それはこんな具合だ。
9月22日、朝4時。マグロを焼いたが、ほとんど食べない。水も飲んでくれない。シャケをそのままにしておいたら、クールボーイ(末弟)が食べてしまった。それでも何か食べさせようと、冷蔵庫に残っていたシャケを掌にのせたら、それだけは食べてくれた。
午後、S動物病院のトリマー・Uさんと、商店街の魚屋でバッタリ会う。「ジュテちゃんはどうですか」と聞かれたので、「あまり食べてくれない」と言うと「みんな心配して、ジュテちゃんのことを話していますよ」。それを聞いて、目頭が熱くなった。
19時、S動物病院。ジュテの様子を診てもらう。病院から戻った時は多少元気だったが、またベッドで寝ている。夜中、2階へ行く階段のところにいたので、抱っこして1階に降り、膝抱っこをしてあげる。ジュテは僕が胡坐をかいた中にスッポリと収まるのが大好きで、頭を左膝にベタっと乗せ、気持ちよさそうにする。
もしや、何か食べてくれるかと思い、カリカリ、缶詰を並べてみたが、やはり食べない。そしてウロウロするだけで、何がしたいのかわからない。そのうち2階に上がって、また寝てしまった。
(峯田淳/コラムニスト)