10月30日。午前中、動物病院に連れて行き、背中から補液を入れてもらう。体重が100グラムも増えて3.52キロになった。以前なら体重が増えたのと同時に少し元気になるが、固まったように動かない。先生も何も言わない。おそらく表情を見ただけで、状態がわかるのだと思う。
家に戻って、ストーブの前に寝かせる。夕方に焼いたマグロ、カツオ、シャケを並べ、缶詰とカリカリ2種類も。ジュテの目の前に皿が6枚、並んだ。
「食べたいものを食べていいからね」
ゆっちゃんは涙声になっている。においを嗅いでちょっとずつペロペロと舐めている。全く手を付けないのがマグロだった。
ジュテは前かがみで、ジッとしたまま。変だな。苦しいに違いない。ゆっちゃんを呼んで、「酸素室に入れよう」と言う。
ジュテは再び抵抗するかなと思ったのだが、すんなり入って、ちょこんと大人しく座っている。
「呼吸が苦しかったんだろうね」
「ジュテ、かわいそう」
ただ、酸素室の扉を閉め、ロックすると、外に出たくても出ることができない。逆にロックしないと、出たいと思ったら簡単に出ることができる。濃い酸素を吸うと楽になり、楽になったら外に出て、また苦しくなったら入ることを覚えてほしいのだが。
ジュテが好きな時に出入りできるには、どうすればいいのか。それには、扉を閉めず、入り口にカーテンのようなものを垂らし、酸素の漏れを防ぎながら、出入り自由にするのがベストではないか。そう考えて、ビニールシートのようなものを買いに出かけた。ついでに、酸素室の中で使えるトイレシートも購入。
戻ってみると、ジュテは酸素室を出て、前日から隠れるようになった和室の押入の上段で寝ていた。やはりここが最後の居場所なのだろうか。買ってきたビニールシートを、酸素室の入り口に垂らしてみる。もう一度、酸素室に入れてみよう。ところが今度は足を突っ張らせて、入ろうとしない。
どうしたらいいのか、混乱してしまった。ゆっちゃんと話をして、とりあえず動物病院に電話して相談してみることにした。
先生には、水分が摂れているかを聞かれる。「朝から、水を飲んだのか確認していない」と言うと「水分を摂らないのがいちばん心配」と言われる。
「落ち着いて、様子を見て下さい。まだ大丈夫だと思います。できれば、自宅で補液を入れる方がいいですね」
その後、酸素室に連れて行ったら、なぜかすんなり入って行ってくれて、ホッとする。水を入れたお皿も置く。しかし、酸素室に佇むジュテをしばらく見ていたら、再び思い立ったように、外に飛び出してしまった。ジュテも身の置き所がわからないのだろう。行き先はやはり和室の押入だった。
こうなったら、好きにさせてやろう。苦しくなったら、酸素室に自分から入って行くだろうから。そのうち和室から出てきて、トイレに歩いて行った。中腰なので便かと思ったら、中途半端なまま、用を足さずに出てしまい、また、押入に戻った。ジュテは後ろ向きに香箱座りをしていた。その姿が寂しげだ。
1時過ぎ、また酸素室に連れて行くと、素直に入ってくれた。
弱ったジュテは、上段までひとっ飛びはできない。押入の前に椅子を置いて、2回で昇れるようにしていたのだが、椅子には弟猫のガトーの姿があった。押入で寝ているジュテが心配で、見守っているのだ。大きなガトーは兄思いの優しい猫なのだ。
夜中、玄関から鳴き声が聞こえた気がして、目が覚めた。
(峯田淳/コラムニスト)