関東某所の矯正施設を出所したばかりというA氏。佐々木容疑者と同様の罪で判決を受けたのは、約5年前のことだ。
「詐欺の法定刑は10年以下の懲役。自分は従犯という扱いで懲役5年の実刑判決。かなりの額を被害弁済に回したものの、執行猶予は付きませんでした。それほど現在の司法は詐欺犯に厳しいんです」
司法は電話番号を仲介する通称「道具屋」も犯罪集団と一体であると判断するというのだ。
「詐欺グループは朝から晩まで電話を使いまくるし、一度に何十回線も借りる。販売する電話屋からしてみたらこんなにおいしい客はいない。儲けの構図は警察も検事もお見通しですよ」
電話番号がどんなルートで取り引きされるのか。解説してもらおう。
「大元の電話番号は総務省からドコモなどの大手キャリアを経て、番号管理事業者に振り分けられます。私の会社の仕入れ先はその下のクラウドPBX事業者。そこと契約して、詐欺グループに卸すわけです。かつて、スマホ1台の仕入れ値は3万円。それに電話番号をつけて10万円ほどで売っていました。1000台、2000台とさばけば莫大な利益が出るのです」
クラウドPBXとはインターネット電話回線(IP電話)の交換機を指し、この事業者を介すことで、携帯電話に「03」「045」「06」といった番号を紐づけることが可能になる。
「古典的なオレオレ詐欺なら、『090』でも騙せたかもしれないが、現在はシナリオも多様化。東京なら『03』を使って、複数のかけ子が弁護士事務所、銀行、証券会社を装って被害者を囲いこみ、何百万円もの金を巻き上げていくわけです。一発数千万円というケースもザラのようです」
スマホに紐づけられた番号は簡単に変更できるが、中には高額で取り引きされる「レア番号」もあった。
「同じ東京発信の『03』でも、下4ケタが『1234』なんて“良番”があれば、数百円の原価に数万円のシステム使用料を上乗せして売っていました。これは役所がよく使う番号だから、かけ子にしてみたら、還付金詐欺には都合がいい。一番人気があったのは『0110』です。言わずもがな警察署ですよ。“警察番号”の問い合わせは多くて、あるグループは大金を積んで予約していました」
高額で取り引きされる番号は他にもある。
「フリーダイヤルの『0120』、コールセンターや企業の問い合わせ先に使われるナビダイヤルの『0570』も人気があります。特に『0570』はなかなか出回らないので、10万円以上の高値で売ることも」
これほどの暴利を貪っていては、詐欺集団の共犯と見られてもしかたないだろう。