「03」や「0570」「0120」で始まる不審な電話を受けた経験はないだろうか。相手は固定電話だから信頼できる──。そんな先入観を逆手に取った特殊詐欺が数年前から横行している。かつて特殊詐欺グループに電話番号を大量販売した罪で刑務所に服役した「通称・道具屋」が、闇のカラクリを告発した。
去る9月22日、「電子計算機使用詐欺の幇助」という耳慣れない容疑で逮捕されたのは、電話番号販売会社アシストライズの代表・佐々木式部容疑者(55)ら男女9人。同社は大手通信事業者から仕入れた約2000の番号を詐欺グループに有償で提供。その電話番号はオレオレ詐欺や還付金詐欺などの特殊詐欺に悪用され、被害の総額は数十億円に上るという。
社会部記者によれば、
「摘発のきっかけは岐阜県で発生した詐欺事件。昨年11月に60代の女性が、介護保険の返金という名目で、およそ49万円を騙し取られたのですが、この事件の捜査の過程でアシストライズとの接点が浮上。犯罪に悪用されることを知りながら、詐欺グループに電話番号を提供した疑いで逮捕に至りました」
この事件が耳目を集めた理由は、詐欺被害の大きさだけではない。
佐々木容疑者は東京・神田で居酒屋「神田万丸」を経営。名物店主として知られ、昨年、深夜バラエティーに出演した際には、客への“逆クレーム”というお題で、
「低評価で書きこまれたらイラッとするよね。『狭かった』とかさ。狭かったって、しょうがねえじゃん。高架下なんだから」
こんな毒舌を吐いてスタジオのタレントを笑わせていたが、社会部記者によれば、
「佐々木容疑者は10年ほど前に、新宿・歌舞伎町のショップで違法なハーブを販売していたことから麻薬取締法違反の容疑で逮捕されています。怪しい儲け話に飛びつくのは昔から変わらなかったのでしょう」
だが今回の事件でいえば、佐々木容疑者は犯罪に直接手を染めたわけではない。また、報道に「詐欺幇助」とあったことから、
「番号を手配しただけで逮捕されるのか」
こんな印象を抱いた方も多いのではないだろうか。
かつて佐々木容疑者と同じように、詐欺グループと取り引きしていた電話販売業者の元代表・A氏はこう断言する。
「被害額の大きさから見て実刑判決は免れないでしょう。法律上、『詐欺幇助』という罪はない。詐欺罪で裁かれ、私のように刑務所に服役することになる。最低でも3年、いや5年は覚悟したほうがいい」
電話販売で天国と地獄を見たというA氏が、詐欺犯罪ネットワークの実態を語り始めた。