原巨人のV奪回に、早くも黄色信号が灯り始めている。
これまで巨人は常に、豊富な資金源を背景に、FA戦線をリードしてきた。だが、親会社の読売新聞は新聞不況で部数が落ちており、財布のひもは固くなっている。これまでのようなマネーゲームを歓迎するムードはない。
そのため、今オフのFAでは、苦戦を強いられそうな状況に陥っている。在京スポーツ紙ベテラン記者が解説する。
「今の巨人の補給ポイントは全部。投手も捕手も内野も外野も足りない。先発として狙っていた阪神の西勇輝は、残留しそうな雰囲気になってきた。国内FA権を行使した西武の森友哉の獲得も、26年ぶりに日本一に輝いたオリックスが一歩リードしている。これまでは巨人ブランドで大物FA選手を一本釣りしてきましたが、今年は無理かもしれません」
巨人は球団の顔になる大物として、今季で契約が切れる楽天・田中将大、浅村栄斗の獲得にも興味を示していた。田中の年俸は推定9億円、浅村も推定5億円とされるが、今季の成績を考え、契約更改交渉で大幅なダウン提示があれば、両選手ともに他球団でのプレーを選択すると思われた。
ところが、営業面を考慮する三木谷浩史オーナーの意向を受けた石井一久監督兼GMは「2人の残留が最優先事項」と明言。その結果、11月2日には、浅村がFA権を行使せず残留で合意している。
他にもFA権を行使したDeNAの嶺井博希や阪神・岩貞祐太など、話題になる選手はいる。だが巨人の場合、他球団の戦力をそぐ意図や、ライバルチームへの加入を妨げる意味合いで、FAで選手を獲得するケースもある。西武の森や阪神・西勇の獲得に失敗すれば、大幅な戦力アップにはなお、つながらない。
現状では今季、10勝した菅野智之が、メジャー移籍を視野に入れている。もし欠けることになれば、戦力ダウンは免れない。
原監督は外国人選手の大量入れ替えに着手するが、新外国人の実際の力は、来日してみなければ分からない。
「何人か覚醒する選手が出てこなければ、来季は最下位もあり得ます」(前出・ベテラン記者)
かつて球界の盟主と呼ばれた巨人が、V奪還どころか、長い暗黒時代に突入するかもしれないのだ。
(阿部勝彦)