そうした中、浮上してきたのが、「餃子の王将」創業者一族内部でのトラブルだった。社会部記者が解説する。
「実は、実行犯の田中受刑者の逮捕直後に、創業者の加藤朝雄氏の長男で、3代目社長を務めた潔氏にも事情聴取をしたことが明らかになった。警察の狙いは、王将フードサービスとA社との間での不透明取引を巡り、3代目社長の潔氏サイドと4代目社長を引き継いだ大東社長との間に軋轢があったのではないかと見て、創業者一族とその周辺を調べています」
餃子の王将は、初代の加藤朝雄氏が中華料理店を始め、93年に株式を店頭公開。94年に就任した3代目の潔社長は積極的にチェーン展開し事業を拡大。その一方で、不動産投資や多額の財テクなどに投資する傍ら、A社との関係を深めていった。
「初代の朝雄氏の妻であった梅子さんの弟にあたるのが、00年に4代目社長に就任した大東さんだった。大東社長は、3代目の潔さんはもとより、二人三脚で経営にあたっていた財務担当で次男の欣吾さんともA社との関係を巡ってたびたび衝突していた。最終的に、A社と王将の不透明な取引に関する報告書を作成したのも、欣吾さんがA社との取引関係をウヤムヤにして正確に伝えなかったことで、不信感を招いたからと言われています。この創業家の対立と事件の関係についても捜査本部は注目しているようです」(社会部記者)
しかし、肝心の欣吾氏は会社経営の一線から退いたのち、東南アジアなどの海外を拠点に生活。今も日本への帰国のめどが立っていないという。
「王将とA社の間でのカネの流れについては、両者の間でまったく主張が違う。大東社長が亡くなってから1年後に王将フードサービスに法曹界などの専門家を交えて作成された第三者委員会の報告書では、A社に対し170億円の焦げ付きがあったことを明かしているが、当のA社の社長だったB氏は『そんな金額は借りていない』と反論。A社と王将側の窓口を次男の欣吾氏が務めていたことから、カネの流れを知るキーマンとして、当局は欣吾氏の事情聴取を検討している。しかし、欣吾氏は16年の第三者委員会の呼びかけにも応じず、任意の取り調べにも今のところ応じる様子がない。捜査本部は海外に捜査員を派遣してでも、欣吾氏の聴取を突破口に不透明な取引の全容解明にこぎつけたい構えです」(司法関係者)
動き出した当局の思惑通りに「黒幕」はあぶりだせるのか。神経質な捜査はまだまだ続きそうだ。