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子供を持つ50代シングルマザーです。以前、この連載で宮崎さんがアドバイスしていた、国が推奨する職業訓練制度「教育訓練給付制度」を利用して、パソコンインストラクターの資格を取りました。ところが実際にはほとんど仕事がなく、結局は派遣に登録しました。この訓練制度は何なのかと、憤りを感じます。
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自民党が総合経済対策の補正予算に「30兆円ほど投じる」と発表しました。30兆円かけて日本経済を立て直すのはいいと思います。驚くほどの物価高、円安、世界の情勢不安といった背景がありますから、やっぱり必要なお金です。
その中で、岸田総理は「人への投資」を提唱していました。具体的には「賃上げにつながる成長分野への労働移動を促すため、デジタル関連などの教育訓練を強化。高い賃金で新たな人材を雇う企業への支援を拡大するとともに、円安の利点を生かして海外展開を目指す中小企業など、1万社を後押しする」というもの。要は日本の稼ぐ力をもう一度底上げしたいのだ、と。
そこで「何だったのか」と感じた、職業訓練制度の問題が浮かび上がってきます。以前、お勧めした、国が推奨する教育訓練給付制度」では「稼ぐ力の底上げ」にはならないと思ったのでしょう。なので、今回の岸田さんは「人への投資」を民間の力を借りてやるぞ、と提唱しているわけです。
もうひとつ、経済産業省が発信している「リスキリング」をご存知でしょうか。リスキリングとは「働き方の変化によって発生する業務での役立つスキルや知識の習得をするための、社会人の学び直し」のことです。アナログからデジタルへと急速に移行した今、これまで追いつかなかったプログラミングやITスキル、デジタル技術を、やったことのない人でも学ぶ重要性が出てきました。
そこでつながるのが、岸田総理の「人への投資」なのです。先日の所信表明演説でも、リスキリングへの公的支援、人への投資として、5年で1兆円を投じると、発言していましたから。
では、実際にお金を投じる先はどこなのか。これが問題です。僕はそれが 「ユーキャン的な通信教育」ではないと信じています。例えば、フラワーコーディネーターや調理師免許は再就職に必要な資格ですが、ペン習字はそうともいえない。転職マーケットや転職エージェントにお金を投じてほしいと考えます。
とはいえ「自分は食品卸会社の営業をやっていました。だから、アナログからデジタルに移行することには躊躇します。でも、時代に追いつかないといけないし、賃金が高い方へいきたいから」という人もいます。そんな人こそ、リスキリングの制度ができたら、速攻で活用してほしい。
このテコ入れ策、ぜひとも実現してほしいのです。日本は打ち出す方針や概念はいいのですが、実現力に欠ける。そこを懸念しています。
原因はやはり、官僚でしょう。社会経験が浅いまま、官僚になると、現場の具体策が思い浮かばない。なんでもかんでも大手代理店に振ってしまえばいい、と考えているフシがあります。
ということで、まずは官僚のリスキリングが必要なのでは‥‥。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ)◆1981年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、日本生命などを経て12年に衆院議員に(京都3区)。16年に議員辞職後は、経営コンサルタント、テレビコメンテイターなどで活動。近著に「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」(徳間書店)。