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10歳の子供を持つ親です。サッカーW杯が始まって思うのですが、世界各国、国歌に非常に思い入れが強い。それに比べて、日本は国歌を教える場面が少ないですね。子供に聞いても「君が代ってナニ?」でした。個人的には、これに違和感を感じます。
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W杯、イランがイングランドとの試合前に国歌斉唱を拒否したのは衝撃でした。イランでは今年9月、「(頭髪を覆う)ヒジャブを適切に着用していない」として22歳の女性が警察に拘束され、その3日後に死亡。これに反発、抗議する形での国歌斉唱拒否でした。それほど、国と国歌はつながりが深いということです。
日本でも、それは同じです。そもそも「君が代」は、平安時代の「古今和歌集」に入っている賀歌のひとつ。賀歌は長寿や繁栄を祈る歌のことで、男女の永遠の絆をテーマにした恋の歌、との説もあります。
第二次世界大戦前までは、国家平安の歌として親しまれていたのですが、なんと! その頃の「君が代」は、日本の正式な国歌ではなかったのです。
では何かというと、よく歌われる慣習歌。「赤とんぼ」みたいなものです。やがて明治時代に小学校の教科書に載り、法制化によって正式な国歌となったのは、平成11年(1999年)。ごく最近です。
問題は「君が代」が、親しみのある歌から一転したこと。それは第二次大戦で、日本が敗戦国になったことが原因です。GHQ(連合国軍総司令部)がやってきて、日の丸掲揚と「君が代」斉唱を禁止しました。軍国主義の象徴の歌として、忌み嫌う対象とされたのです。当時の左派の人たちを、GHQがマスメディアに送り込み、右派の色をオセロのように反転させました。
それと同様に学校の現場にも、国旗掲揚と「君が代」斉唱はダメだ、という思想を送り込みました。まさに現在はその名残りが続いているため、教育現場では教えない、と言っても過言ではないでしょう。
とはいえ、教育は学校教育だけではない。家庭教育もありますが、各家庭で「君が代」を歌いますか。
フランスの国歌を例にとってみましょう。有名な「ラ・マルセイエーズ」です。フランス人はこれをなにかとよく歌いますが、内容はひどく激しい。フランス革命当時の話で、マルセイユ地区から兵士が行進する際に、士気を高めるために歌ったものでした。「やれー! 倒せー! 喉をかき切って血で染め上げよ!」というような歌詞です。
余談ですが、「ラ・マルセイエーズ」をビートルズが皮肉って、彼らの曲「愛こそはすべて」のモチーフに使用しました。なので、イントロだけは知っている、という人は多いのでは。
さて、日本が国歌を子供たちに教えないのはどうなのか、という件。日本は今、なんだかんだ言って平和です。子供たちは日本が今、平和なことに感謝しながら「君が代」を歌うシーンがあってもいいですよね。「えー、こんなダサい曲!?」と感じるかもしれませんが、今のJ-POPみたいな国歌になったら、それも違和感がありませんか。
重要なのは内容や曲調ではない気がします。今の若者は「君が代」を歌って戦争なんか思い出しません。「国歌を知らない=愛国心がない」ではありませんが、今一度、文科省は検討を。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ)◆1981年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、日本生命などを経て12年に衆院議員に(京都3区)。16年に議員辞職後は、経営コンサルタント、テレビコメンテイターなどで活動。近著に「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」(徳間書店)。