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自宅で公文教室をやっているのですが、不動産業の知人が、子供事業という視点で、保育園を作ることを提案してきました。保育園は年に一回、国からごそっと補助金がもらえるから儲かる、と。不動産屋なので土地はどうにでもなる、とも言います。幼児教育を金儲けの具として活用するとは‥‥。だから送迎バスに子供を取り残す事故を起こす経営者がいるのではないかと思ってしまいます。
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幼児期の教育、保育園や幼稚園の生活は、子供の将来には大切なこと。それを金儲けのためにやろうとしている人が周りにいたら、僕も憤慨します。
認可保育園を開設するためには、社会福祉法人を設立する。すると独立行政法人や医療福祉機構から、低利の融資が受けられるようです。自治体からの補助金も交付されるし、税制も優遇されるのだとか。
ただしそのためには、国や自治体が定める基準をクリアしなければなりません。園児の定員、保育室や園庭の広さ、園児ひとりあたりの保育士の数など、いろいろと定められています。その中には確かに、立地の問題もあります。不動産業者なら、そりゃ、場所はなんとでもなりますね。
最終的には、各自治体の審査で適当と認められた場合に、自治体から知事へと審査が移行し、認可が下りるという流れです。
今回、詳細を確認して驚いたのは、無認可保育園に関しては、00年の規制緩和によって「株式会社」や「NPO法人」にも門戸が開かれ、かなりハードルが低くなっていること。
保育園は株式会社の参入はまだ少ないとはいえ、やる気になれば、保育園経営もできる、ということなのです。事実、幼稚園は株式会社による経営も多く、だから静岡のような、バス放置死事件を起こす杜撰な幼稚園が出てくることもあるのでしょう。
僕は議員時代、私立幼稚園協会という団体に、教育の問題点を伺いに通っていました。志の高い人が集まってくる団体でしたよ。
青山周平君という議員は、愛知県岡崎市にある「青山学園」の御子息。やはり幼児教育に非常に熱心な男で、幼児教育が無償化される前から「幼稚園も無償化するべきだ」と文科省に訴え続けていました。
ところが安倍総理が突然、「幼稚園も無償化する」と言った年に即実現。彼が何年も取り組んできた情熱が、鶴の一声であっさり実現したと、複雑な気持ちを吐露していました。
そういう男もいれば、今回の相談に登場するような人物もいる。子供の未来を考えている人もいれば、子供を食いものにカネ儲けをする人もいる。ペット産業もそうですが、命を扱っているという意識を忘れてほしくありません。
国がやることは、管理システムの義務化です。そして補助金を、園内の監視システムや送迎バス内のドライブレコーダー、防犯デジタルシステムなどに必ず使わせる。セキュリティー業者と契約する、なども。
あとは、保育園や幼稚園は参観日以外にも、いつでも抜き打ちで覗くことができるようにすること。社会全体で目を光らせないといけないと思います。
宮崎謙介(みやざき・けんすけ)◆1981年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、日本生命などを経て12年に衆院議員に(京都3区)。16年に議員辞職後は、経営コンサルタント、テレビコメンテイターなどで活動。近著に「国会議員を経験して学んだ実生活に即活かせる政治利用の件。」(徳間書店)。