中国共産党の最高指導部である政治局常務委員会が10日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために実施している「ゼロコロナ」政策を継続することを表明。この日行われた議会で習近平国家主席は、「必要な防疫措置を緩めてはならない。ゼロコロナの方針を貫き、感染予防と経済発展を統一的に計画しなければならない」と強い意志を改めて内外に示した。
世界各国がインフレに苦しむ中、深刻な不動産市場の需要低迷でデフレを引き起こす懸念が強まっている中国。急速に進む少子高齢化に加え、教育費負担などが原因となり、低下し続けていた結婚率や出生率が、ここ数年のゼロコロナ政策でさらに悪化。それが、不動産市場の需要低迷をさらに押し下げる要因となっている。
「将来の中国経済を占う上で最大の問題は、『資産デフレ』と『少子高齢化』の2つ。ところが、10月中~下旬に開催された中国共産党大会でも、不動産市場浮揚の手掛かりになるような政策は一切発表されず、そのうえ、まだ『ゼロコロナ対策』を継続させるというのですから、今後さらに不動産市場が冷え込むことは間違いないでしょう」(全国紙政治部記者)
中国の不動産のシステムは、地方政府が土地使用権を開発業者に売却し、デベロッパーが金融機関から借金してマンションを建て、その販売利益をさらに再投資するという成長循環を基本に肥大化してきた。この循環が崩れたことで露見したのが、昨年秋の不動産大手「恒大集団」の経営危機だ。これをきっかけに中国不動産市場を巡る環境は一変した。
「以来1年が経過し、あるシンクタンクの調べによれば、今年9月の段階で、中国の新築住宅価格は13カ月連続して前月比マイナス。値下がりの期間も過去最長だとされています。しかも、不動産業界上位100社の販売成約額(9月段階)は、昨年に比べ45%以上も下落しているといいますからね。今後、連鎖倒産が起こる可能性は大きいでしょう」(前出・政治部記者)
そんな状況の中、ここ数年人気なのが、不動産の競売物件市場だ。競売とはすなわち、借金を抱える法人や個人の住宅を差し押さえ、金に換えて弁済するのというもの。中国ではこの「競売物件」を、アリババなどのオークションサイトが行い、人気を呼んでいたという。経済部デスクが解説する。
「中国の『2021年司法競売不動産業界白書』によれば、19年に約60万戸だった競売物件が20年には前年比9.7%増の約67万戸に増加。さらに、21年には約76万戸(前年比13.2%増)に増えたという結果があり、特に上海などの都市では、投資目的での買い手が多かった。ところが最近では、地方都市を中心に査定値を下回る価格での『出品』も多く、それでも買い手がつかない物件が少なくない。それどころか、最低入札価格を『数十元(1元が約20円)』にして出品しても入札者ゼロで、『競売流れ』になる物件も目立つようになってきた。最後の砦と言われた競売物件市場がかげりをみせたことで、不動産価値の落ち込みに歯止めがかからなくなっていることがわかります」
通常、競り落とされない住宅は、何度か競売にかけられ、最終的には金融機関が処分するものの、その数があまりにも多すぎると、金融機関が破綻する恐れもある。現在、競売物件が多いエリアは、北京、上海、広州、深センの一級都市だが、
「特に、上海で暮らす人々には、いい物件に住むことがステータスで、それが不動産人気を支えてきました。ところが、コロナによるロックダウン以降、空気が一変。そんな中で、習近平の続投が決まり、今後も『ゼロコロナ政策』を続けると発表したことで、上海をはじめとした一級都市で暮らす市民たちの不動産熱が完全に冷めてしまった。不動産バブル崩壊はもう待ったなしの状況です」(前出・経済部デスク)
それでもなお「ゼロコロナ」に固執する習体制に、国民の不信感は募るばかりだ。
(灯倫太郎)