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村田兆治さんを孤独に追いやった「プロアマ規定でアマ野球に関われず」生きがい消失の現実

 離島の球児の憧れの人、村田兆治さんが逝ってしまった。マサカリ投法で驚異的な身体能力を見せた往年の姿を知る世代は、今年9月、村田さんが羽田空港で保安検査員に暴力を振るい現行犯逮捕された際の近影に、驚いたことだろう。心臓を患っていたとされるその姿は、特有の全身のむくみと頬の赤みが顕著で、警察が現行犯逮捕するほどの大立ち回りは困難であるかに思われた。

 11月11 日未明、近隣住民はけたたましい音で目を覚ましたという。

「消防車のサイレンがすさまじいので窓を開けたら、小田急線の向こうから火柱が見えた。村田さんの家があるのは成城学園駅近くの、成城エリアの中でも屈指の高級住宅街エリアです。敷地が広大なお屋敷ばかりで、20台近くの消防車が集まったこともあり、周囲への延焼はなかったけれど、ボンボンと破裂音が聞こえてきて、どんな大火事かと思った。まさか村田さん宅だったとは」

 これは近隣住民の目撃談である。村田さんは部屋着姿で、座ったままの状態で発見された。死因は一酸化炭素中毒だという。近年の村田さんを知る、ベテランのスポーツ紙記者が言う。

「引退後の村田さんのライフワークは、子供達への野球指導でした。自ら立ち上げた『離島甲子園』は、新型コロナの影響で20年、21年と開催できなかった。生きがいである野球指導もままならず、孤立していたんです。孤独感と苛立ちが募っていたのかもしれません」

 元プロ野球選手には犯罪歴がつくと、アマチュア野球では指導ができない「プロアマ規定」がある。9月に現行犯逮捕歴がつき、アマチュア野球に関われなくなったことで、村田さんは生きる希望を失っていたのではないか。そんな状況下での、不幸な火災だったのだ。

 新型コロナ蔓延以降、空港では手荷物検査のほかに検疫業務も加わって、業務が煩雑となった。例えば検疫業務にあたる医療職にも「事務的かつ効率的に乗客を捌くように」という指示が出ている。検疫所も保健所も新型コロナ対応で派遣された非常勤職員に「有名人だとか、そういう配慮は無用。マニュアルに沿わない対応を行えば、処分する」という、実に機械的な指示が出た。

 様々なコロナ関連現場に駆り出された筆者自身も、とある有名人への対応を巡って「有名人とかそういう個人的事情を言い出した時点で、個人情報漏洩だから。そんな背景は関係ない。規定通りの短時間で対応しろ」と、その有名人の経歴を何も知らない派遣会社の社員に、頭ごなしに何度も注意された経験がある。

 コロナ以降に就職したZ世代の若い職員は、政治家から企業トップ、スポーツ選手、芸能人まで、年配の有名人を「知らなーい」で済ませ、新型コロナを口実に高圧的な命令口調で老いぼれ扱いする言動が、オバさん世代の自分にはこの3年間、ずっと鼻についていた。わずか3分から5分で用件を済ませろという「人買い」企業から押し付けられたノルマがあろうと、長らく社会貢献してきた人物に敬意を抱いて接遇するのは、最低限の礼儀と社会常識ではないのか。

 コロナ前でも空港の各ポイントで、意気がった若い職員にイラッとした経験は、自分にもある。9月の暴力事件、手が出た村田さんに非はあるが、金属探知機をくぐる前に「スマートフォンや携帯電話をトレイに置いてください」と、検査場の職員は丁寧に説明をしていたのだろうか。ご本人は亡くなってしまったが、今後、書類送検される際に、事件に至る背景は検証すべきだろう。村田氏に代わって離島の少年少女に夢を与える人材は出てこないのだから。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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