ある日突然、体に赤いポツポツが発症。ただの湿疹かと放置していたら激痛に襲われた──。もしかしたら「帯状疱疹」かもしれない。
「帯状疱疹」は、水疱瘡と同じウイルスで発症する皮膚疾患だ。小さい頃に水疱瘡にかかった経験がある人は多いが、治っても、ウイルスは体内の神経節に潜伏していて、ストレスなどで免疫力が低下すると再び活性化することが原因だ。
症状は、体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれの皮膚症状が3週間ほど続く。多くは、腕や胸、背中、顔、首など上半身に現れる。痛みの種類には個人差があり、皮膚の違和感や痒み、針で刺されたような痛み、焼けるような激痛など様々だ。
治療を行わなくても治ることもあるが、治療が遅れたり、放置すると、頭痛や39度以上の発熱などの全身症状が現れるケースもある。特に、首から上の帯状疱疹は、重症の場合、失明や顔面麻痺、難聴を引き起こす危険もある。発疹が生じて3日以内に治療を開始することがポイントとなる。
「帯状疱疹」は、50代から発症率が高まり、80歳までにおよそ3人に1人が経験すると言われている。子供の頃に水疱瘡に罹患した場合は、ウイルスへの免疫を持っているが、年齢と共に獲得した免疫は弱まり、帯状疱疹発症のリスクが高まってしまうのが原因だ。日頃から体調管理や免疫力低下を防ぐ生活習慣が重要になってくる。
ワクチンも有効だ。予防接種の対象年齢は50歳以上。発症を完全に防ぐことは難しいが、症状を軽く済ませることはできると言われている。また、帯状疱疹後神経痛(PHN)などの後遺症の予防にもつながるため、医療機関では積極的な接種が推奨されている。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。