テリー たけしさんが「世界の北野」になったとしても、きよしさんとの漫才っていうのは心の原点なんですよね。
きよし 原点だね。うちの相方のすごいところは、あれだけの映画監督になっても、お笑いを忘れていないところだよね。カンヌ映画祭に行ったって、かぶりものをしたりさ。普通はもっと、気取ったりするじゃないですか。
テリー だから今回も、きよしさんとお笑いをやるのが楽しいんじゃないですか。
きよし 僕もうちの相方とやると楽しい。自分が笑っちゃうもん。
テリー この世界でたけしさんのことを「相方」って言えるのは、きよしさん1人だけなんだよね。これはすごいことだよ。
きよし まぁ場面によっては、呼び方を変えたほうがいいのかもね(笑)。でも漫才をやり始めた最初のころは、仕事に穴を開けるわ、大変だったんだよ。
テリー 最初はどういう出会いだったんですか。
きよし 最初はフランス座(現在の浅草フランス座演芸場東洋館)で一緒だったんですよ。
テリー 最初から漫才をやっていたんですか。
きよし いや、僕は師匠の深見千三郎とコントをやっていたんですけど、うちの相方がフランス座に入ってきて、だんだん3人でやるようになったんですよ。そしたら師匠が「お前ら2人でやれ。俺はもう明日から舞台に出ないから」と言うんで、2人でフランス座の舞台をやっていたんです。
テリー その時は、コントのスタイルですね。
きよし そう。だけど、僕とすれば「フランス座でずっとやっていても世に出ていけないし、どうしようかな」って思っていた時、浅草の松竹演芸場に見にいったら、当時テレビで大人気だったWけんじ師匠がその舞台に出てるわけですよ。だから「この舞台に出たらテレビに出られるんじゃないか、これは漫才をやるしかない」と思って。
テリー そうか。コントより漫才のほうがいいと。
きよし 漫才は金がかからないじゃないですか。スーツひとつあれば司会から何からできるし。で、僕らはストリップ劇場で女の裸を見に来ているお客を笑わせているわけでしょう。寄席っていうのは、笑いたくて来ている客なんです。だったら笑わせるのなんて簡単だと。で、相方を呼んできてさっそくやったけど、これがまったくウケやしない。
テリー どんな漫才をやっていたんですか。
きよし まともな漫才をやりましたよ。ただ、とにかくしゃべくりが速いのよ。
テリー たけしさんが。
きよし そう。お客さんに「お前らの漫才は聞くだけで疲れる」ってよく言われた。あんまりウケないんで、相方もイヤになっちゃったんじゃないの。浅草演芸場に出てる時に、酔っ払いが「おい、お前らさ、漫才なんかやめて飲みに行こう」とか言いだしたんですよ。そしたら相方が「飲みに行こうったって、金は持ってるのかよ」って返したら「ほら、1万円あるよ」って、ポケットから出したんだよ。そこで相方がパパーッと舞台を降りて「酒なんか飲まなくていいから、この金くれ!」ってその金を取り上げたの。そしたら酔っ払いが「金返せーッ」って言って、大ウケだわさ。
テリー ハハハハ。
きよし それからだんだん、ツービート漫才のスタイルができていった感がある。