鈴木氏が憤りながら語る。
「11年に会社側の退職勧奨に屈して、辞めてしまったGさんという方がいます。その後、彼は仕事を探していたのですが、見つからず自殺されてしまったのです。お父さんが東京管理職ユニオンに入って、会社を訴えたいということで6月6日に記者会見をしました」
実は、リコーの場合、業績は黒字が続いていた。11年度はアメリカの企業を買収したことなどが赤字の原因だった。つまり、緊急に人員削減をする必要性には疑問符が付くと、経済部記者が指摘するのだ。
「本業そのものは楽ではないものの、シャープのような決定的な経営危機ではないのです。リストラを発表し、業績改善の姿勢をアピールすることは、株主、ファンド、銀行への対策です。そうすることで資金繰りがよくなるわけです。たとえ、7人が訴訟を起こし、自殺者が出たとしても、リコーは今回のリストラを経営的に成功したと考えているでしょう」
同社が一連の出向に「違法性はない」と自信を持っていることは確かである。それは、会社側が法律を徹底的に研究してリストラを行っているからだ。
「やっていいことと、いけないことを社労士やコンサルなどに学びながらリストラをやります。会社が何を意図してやってくるのか、わかりにくくなっているのです。サラリーマンは知恵を持たなければなりません」(鈴木氏)
こうした合法リストラマニュアルは、すでに多くの会社で用意されており、まさにリコーの一件は他人事と言い切れるものではない。サラリーマンは、それぞれの局面で、防衛術を身につけなければならないのだ。
「人事から何か言われた時には、揚げ足を取られないよう録音など記録を取ることが大切です。日本の会社では、業務命令に従う規則があります。しかし、業務命令に従うと言いながら、従わないという変なテクニックもあるのです。『発令された業務命令には従いますが、異議を留めおきます』という文章を書面やメールで、上司に対して残すことが、あとになって効いてくるのです」(鈴木氏)
何より重要なのは、専門家への相談だ。労働事案や契約関係に強い弁護士の存在を常に念頭に置いておくべきだという。リコーの「リストラマニュアル」には、こう指示されている。
〈労働組合等の名前を挙げて、具体的な外部組織とアクションを取っていることが予想される場合(報告するようにしてください)〉
この極秘資料の真偽について、リコー広報担当者はこう回答している。
「これは、ちょっとね、今、人事に確認しているのですけど、わからないんですよねぇ‥‥」
会社の都合で人生をどん底に落とされてはたまったものではない。