「解雇自由化」の影響によって盛んになると言われるのが「クビになる前に早期退職を」という動きだ。だが、これまた悲惨な末路が待ち受けているという。
事実、雇用の現場では今年に入ってからも、早期退職者を募集する上場企業が急増している。東京商工リサーチによると、昨年は日本電気、シャープ、ルネサス エレクトロニクスなどの大手電機メーカーを中心に63社。今年も内容を確認できた上場企業だけで、すでに26社に上ったという。
おおむね40歳前後から始まる早期退職制度。リストラの一環として解雇を回避するために実施され、転職や独立を考える社員が応募すれば退職金に割増金を加算されるなどの優遇を受けられることが多い。
だが、そんな中高年の「その後」を追うと、悲痛な叫びが束となって聞こえてくるのだ。
大手IT企業に勤めていた40代のA氏は、独立して事業を興すために退職した。だが、準備を始めてからすでに8年。愛想を尽かした妻は家を飛び出し、家庭も崩壊。それでもAさんは糸口がつかめないまま、現在も準備のために自宅で研究を続けている。
50歳代前半のB氏も大手企業を渡り歩いたあと、仲間と立ち上げた事業に失敗。10年頃からハローワークで本格的に仕事を探し始めた。これまで3年近くの間に約200社に応募し続けてきたものの、面接までこぎつけたのはわずか5社。
「50歳を過ぎて人脈もなく、営業経験しかない人には本当に厳しい」と嘆くのだ。ハローワークで仕事を探し続ける今は何の手当もなく、200万円ほどの貯蓄を少しずつ取り崩している状況だ。
大手金融機関に勤務していた40代のC氏は退職後2年余りの空白期間を経て、再就職活動を開始。応募先は一般企業だけでなく、公益法人、学校法人、官公庁など多岐にわたる。
「1年間に300社以上応募し続けたものの、採用されることはありませんでした。郊外に購入していた持ち家も売却し、ボロボロになって疲れてしまいました‥‥」(C氏)
中には1年半の間にハローワークで募集のあった延べ538社に書類を送ったものの、全て不採用となった中年男性もいる。ちなみに、面接を受けさせてくれたのは42社だが、面接時に「スキルがない」と言われた5社には、指摘された資格を取得して再度受け直したものの、いずれも音さたはなかったという。
こうした現実をよそに、厚労省が3月29日に公表した今年2月の有効求人倍率は0.85 倍。雇用の現場を取材するジャーナリストによれば、
「新たに受け付けた求人も上昇傾向にあるなど、このところ雇用情勢は改善しつつあるとアピールしている。実際、全国のハローワークで受理された求人件数は3月26日時点で88万4019件。求人数は40歳のフルタイムで47万1028件です。50歳でも43万6613件ある」
と言い、確かに仕事はあふれているように見える。
ところが、11年度の求人数815万7140人のうち同年度中に就職できた人は219万810人で、「充足率」はわずか26.9%。今年1月の実数では17.6%にすぎない。これだけの求人数がありながら4~5人に1人程度しか雇用につながらない状況が続き、実態は悪化しているのだ。