高収入とスキルが得られる外資系一流企業として、かつては常に就職人気ランキングベスト10に入っていた日本IBM。ところが、今やブラック企業の最右翼に数えられ、その荒っぽいリストラが国会でも取り上げられた。元社員と現役社員らが「残虐な不当労働行為」の数々を語り尽くした!
終業時間間際の午後5時頃、上司が突然社員を呼び出し、「業務成績不振」を理由に解雇を通告して、職場から閉め出す「ロックアウト解雇」──。
「本当に悔しい思いをしました。同時にこんなこと許してはいけない。他の会社に広がり、当たり前になったら日本がおかしくなる。そんな思いで会社を訴えたんです」
こう語るのは日本IBMを解雇された松木東彦氏(41)である。
松木氏の詳細な証言はのちに紹介するが、日本IBMの理不尽な解雇事件は、昨年11月に国会でも取り上げられた。共産党の志位和夫委員長が、当時の野田佳彦総理に質問し、「あってはならないやり方」だという答弁を引き出したのだ。
だが、国会の質疑などなかったかのように日本IBMは組合員へのロックアウト解雇を強行している。
全日本金属情報機器労働組合の日本IBM支部ではこう話す。
「昨年、解雇通告を受けた労働者15人のうち、10人が組合員です。そして今年、解雇通告された組合員15人も合わせた26人の中には、組合の役職者が10人も含まれているのです。中央執行委員15人中5人も解雇となり、組合機能が大打撃を受けています」
日本有数のIT企業が繰り広げる耳を疑うような解雇劇。昨年末には東京地裁で地位確認を求める「IBMロックアウト解雇裁判」第1回口頭弁論が開かれた。公判に登場した3人の原告のケースを見ておくと、最初に出廷したAさんは2008年に、当時の所属部門の月間最優秀賞を受賞し、09年にはチームリーダーから感謝状と盾を授与されるほど仕事のできるバリバリの社員だった。
だが、昨年7月に具体的な理由を告げられないまま、解雇された。
「もともと常軌を逸した長時間労働のため、うつ病を発症していたんですが、理不尽な解雇でさらに悪化してしまいました」(組合関係者)
収入を断たれたAさんは食費を一食300円に切り詰め、同居して面倒を見ている両親も心労が重なっているという。
続いて登場したのが、冒頭の松木さんで、昨年9月18日の午後5時頃、上司に呼び出されると、突然、解雇を通告され、私物を整理するよう迫られた。そして、5時45分の退社時間が過ぎると社外に追い立てられ、翌日からの出社が禁止されたという。残った私物は後日、段ボールで送られてきたと証言。
3番目に登場したCさんは、上司から「組合に入っていると不利な査定がなされるという事実を知っていますか」「何か、活動をしていますか」などと、上司が不当労働行為に該当する発言をしていたと証言した。以下、松木氏のケースを本人の証言とともに詳しく見ていこう。
◆アサヒ芸能8/1号より