これまで憲法上認められなかった「集団的自衛権」を、憲法解釈の変更で「行使容認」とするべく、安倍政権がゴリ押しの勢いで最終調整を進めている。いよいよアメリカのために自衛官が「血を流す」可能性が現実味を帯びてきたが、当の自衛官たちは今、何を思うのか。陸海空の現役隊員が語り尽くした!
海上自衛隊1尉=以下、海= 集団的自衛権の行使容認については、個人的には賛成です。ただ、私が所属する部隊の中では話題になっていない、というより何となく政治の話を口にしてはいけない空気がもともとあるんですよ。
陸上自衛隊士長=以下、陸= 陸自でも、今回の議論は「ようやく始まった」という意見が大勢です。今の状況で海外に派遣されても日本の信用はガタ落ちするだけ。例えばイラクに派遣された時も、NATO加盟国のオランダ軍に警備してもらっていた。もしオランダ軍が攻撃を受けても、日本は憲法9条の制約があって助けることができなかったので、何しに参加しているか、存在意義すら問われていた。
航空自衛隊3曹=以下、空= 私も個人的に大賛成です。というのは、入隊してわかったのですが、日本は独立国じゃないんです。日本の上空はいまだに米軍が管理していて、無許可で日本の国内を飛べるのに対して、日本の旅客機は国内であっても米軍にフライトプランを申請して、許可が通らないと飛ぶことが許されない。集団的自衛権が行使されれば、日本国として活動範囲が広がって、少なくとも今よりは世界から独立国として認めてもらえると思うのですが‥‥。
ここで集団的自衛権について、少し説明を加えておくと、そもそも、「自衛権」には「個別的自衛権」と「集団的自衛権」がある。個別的自衛権は、自分の国が他国から攻撃された時、自分の国を守る権利である。もう一方の集団的自衛権は、自分の国が攻撃されていなくても、同盟国が攻撃された時に一緒に反撃する権利を意味する。
安倍政権では、この集団的自衛権の行使容認を、戦争をしないと定めた憲法9条の解釈を変更することで実現しようと躍起になっており、今、与党内で議論が続いている。
「自民党は行使できる範囲について、『我が国の存立を全うするための必要最小限度』と主張していますが、公明党はその表現の曖昧さに難色を示しており、与党内の足並みがそろわない事態が続いています。ですが、実際は今後の選挙の票を見据え、ギリギリまで紛糾したように見せて最終的には両党合意する流れになるでしょう」(政治部記者)
陸 集団的自衛権の議論になると、反対派の人は「すぐに戦争を始めるのか!」って怒りだす。
海 そう。極論で物事を語ってきますが、この話は「攻撃してきた相手をすぐに反撃して殺す」という意味じゃないんです。
空 むしろ集団的自衛権が認められることで、戦争は起こりにくくなるはず。今まで日本は何も抵抗しないから、北朝鮮や中国にナメられっぱなしなんですよ。
海 今は軍隊や装備だけで相手の攻撃する意思をくじくことができます。集団的自衛権の行使もそうした「装備」と同じ効果がある。「軍事行動に関わる法制や武器などの装備は全てそろっているけど、それでも攻撃するのか」って。戦うよりも「見せつける」威嚇効果で戦争の勝敗が分かれるんです。
◆アサヒ芸能6/17発売(6/26号)より