テリー 監督も選手も内田本人も、誰のミスだったのか、みんなが知っているわけですよね。その晩というか、失敗した選手はいったいどんなふうに自分の反省材料にするものなんですか。
北澤 それは本人が「あれは申し訳なかった」と言えるのか黙っているのか。もし黙っているならそれを言いだすやつがいるか。あるいはチームとして言わないで内田だけ外して、みんなで話すか。とにかく何がチームにとっていちばん有効なのかを検証できないと。
テリー わあ、怖いねえ。
北澤 でもそれを23人でやっていかないとダメなんです。試合は、言い合える関係性がチームとしてどのように準備できたかだと思うんですよね。
テリー そういった関係の中で鍵を握るのは、やはり長谷部ですか。
北澤 まあ基本的には、チームを統率するキャプテンです。緊急事態にどう対応していくかという役割がやはりありますから。例えば僕らの時は、もうほんの数センチのミスをしたら、黙ってないですからね、ラモスが。
テリー そうか。そこはやっぱり「ラモス」だよね!
北澤 怒るのは試合の最中ですから。試合中に「お前、ふざけんなよ」って言われて。やっぱり怒られた瞬間に、その理由がよくわかるし、まさに現場で修正していかなきゃいけないから。
テリー 確かにラモスさんは、そういう性格だよね。
北澤 だけど、その性格をいくらわかったうえでも、当時、若い僕らはムカつくわけじゃないですか。
テリー そりゃそうだろうねえ。
北澤 「何だよ、ラモス!」ってなると、また横のあたりから、フォローの先輩が入ってきたりする。そんなふうに、僕たちの時代はうまいコミュニケーションの仕組みができていたんです。こういったチームのつながりがあるかないかは、結構大きいですね。
テリー 今回のチームの中に、ラモスさん的な役割の人間はいるんですか。
北澤 それが大久保であり、本田であり‥‥彼らが少し汚れ役になって、長谷部がうまく整えていくというのがいいんじゃないかなと思いますけどね。
テリー 問題を具体的にしていかない態度が、いちばんまずいですよね。
北澤 そうですね。試合と試合が短い中ではどんどん修正していかなきゃならない。そこは本当に大事です。
テリー 今回選ばれた23人についてはどうですか。
北澤 今までの監督はメンバー決めに迷ったりするんですが、ザッケローニはやりたいサッカーが明確に出ていて、それに必要なメンバーということで選んでいるので、選手側からするとわりと納得がいくんじゃないでしょうか。むろん、選ばれなかった選手はそうじゃないかもしれませんが。
テリー かなり「攻めのサッカー」ですよね。
北澤 そうですね。海外に行っている選手は、10年の南アフリカ大会では4人だったのが、今回は12人になっていて、ビッグクラブに所属している選手もいますから、自信が持てる時代になっています。
テリー でもビッグクラブに所属しているといっても、香川はほとんど出場できてないですよね。本田もそうかもしれないし。野球だと、日本シリーズみたいな大きな試合になると予期せぬヒーローが出てきたりするじゃないですか。今回は誰が出てきそうですか。
北澤 本田を追い越す人が出てこないといけないですね。やっぱり柿谷ですよ。スターの要素を持っていますから。ただ、途中で本田に「お前、追い越させねえぞ」みたいな感じで、ヤンチャというか、イキッた部分を少し消されたところがあるんですね。
テリー それはなぜでしょう。
北澤 本田が何かを教えようとしてそうしたのか、ちょっとわからないんですが、僕はもっとトガっていてもいいと思います。天才的なボールコントロールの力を持っていて、世界トップのネイマールに近いところがありますね。
テリー 柿谷の次は誰ですか。
北澤 山口蛍。
テリー いいですねえ。長友もいいでしょう。
北澤 長友は今回のワールドカップで「世界トップのサイドバック」って言われるようになっていくんじゃないですか。
テリー 彼はスタミナが切れないですよね。
北澤 切れないですねえ。いつも試合前に、自分の筋肉に話しかけながらトレーニングしています。
テリー え?
北澤 普通、触ったりは誰でもしますが、長友は(自分の太腿に向かって)「おい、お前、大丈夫か?」みたいな感じで。
テリー ハハハハ。
北澤 決して恵まれた体格ではないと思うんですが、努力によってあそこまでできるという意味で、子供に与える影響力も大きいと思いますよ。
◆アサヒ芸能6/17発売(6/26号)より