原巨人の、昨年オフのFA戦線は散々だった。特に打てる捕手獲得を最優先事項としていただけに、西武の森友哉を日本一球団のオリックスにさらわれたのは大きな痛手だ。
森獲得に際し、巨人はオリックスの推定4年18億円を上回る条件を提示したという。スポーツ紙デスクは、次のように内部事情を明かす。
「最低で年俸5億円の4年契約を提示したといわれていますが、総額30億円規模だったようです。しかも、西武時代に付けていた背番号10に加え、巨人ではタブーとされている金髪や長髪も容認する方向だったようです」
球界の盟主と呼ばれた巨人にとっては、屈辱的な「土下座外交」のような交渉だったが、獲得が実現していれば、チーム内に大きな抗争が起きる可能性があった。
現在、巨人の背番号10は中田翔。森が10となれば昨季、復活の足がかりをつかみ、今季も岡本和真と4番争いをする中田から剥奪することになるからだ。
しかも中田は日本ハムからの入団の経緯もあり、それまでの金髪は許されず、ヒゲも認められなかった。ところが、森には全て容認されることになれば、面白くないのは当然だ。
巨人に移籍して以降、中田は猫をかぶっているのか、問題は起こしていない。だが本来は、日本ハムで後輩への暴力事件を引き起こすようなパワハラ体質がある。森と待遇面で差をつけられた上、背番号まで剥奪されては、黙っているわけがない。
一方、森は元ヤンキーで、やんちゃな性格といわれている。パワハラを受けようものなら、応戦することは間違いない。中田と森の両者を知るスポーツ紙遊軍記者は、
「あの2人ならうまくいくか、徹底的に反発するかのどちらか。チームが空中分解する火種になりかねなかった」
巨人は森獲得に失敗したが、原監督は内紛を未然に防ぐことができた、と自分に言い聞かせるしかないだろう。
(阿部勝彦)