パ・リーグでオリックスの3連覇が目前となった。今季は2連覇の中心選手だった吉田正尚がレッドソックスに移籍。優勝は厳しいとの声もあったが、吉田の穴をしっかり埋めたのが西武からFA移籍した森友哉だった。
昨オフのFA移籍では争奪戦が繰り広げられ、森が選んだのはオリックス。「のびのび野球をやりたい」というのが理由だった。完璧にフラれたのが他ならぬ巨人。というより「避けられた」と言ったほうが近いだろう。
巨人担当記者によれば、編成面を含め全権を掌握する原辰徳監督は、
「中田翔(森の出身校の大阪桐蔭の先輩)もいるし、背番号も西武時代につけていた10番を用意した。10番をつけている中田には別の背番号を準備していました。森獲得に向けては原さん本人も『出馬』して巨人のユニフォームを着させるつもりでした」
しかし森は巨人との交渉には一度も応じずに早々にオリックスに決めた。結果、昨オフの巨人の補強策は大失敗に終わり、今季もリーグ優勝を逃した。
巨人といえば「FA補強」のパイオニアだ。1993年の落合博満氏を筆頭に、長嶋巨人時代は他球団の4番もしくはエース投手を獲得し続けた。原監督も2019年に「(他球団の選手が)FAしたら『参加するのがジャイアンツ』。そうしないとFAがダメになる」などと発言。毎オフ必ずリストアップしている。
FAで巨人に「NO!」を突きつけたのは森だけではない。長嶋巨人では1997年の吉井理人投手(現千葉ロッテ監督)だけだったが、原巨人になると2002年、メジャー移籍した松井秀喜の後釜としてオファーした中村紀洋氏、07年には本人は巨人入りに意欲的だったが年俸面で折り合わなかった福留孝介氏などがいる。また19年の楽天からFA宣言した美馬学投手、ロッテに在籍していた鈴木大地も原巨人がオファーを出しながら回避した。ここ数年はFA補強でも惨敗続きなのだ。
「これまで巨人へFA移籍で入団した選手は、引退後も球団にコーチや職員などで何年か残れる終身契約を結んでいるパターンが多かった。今の選手たちはそんな条件にも魅力に感じていないようです」(前出・巨人担当記者)
巨人を避けオリックスの3連覇に貢献した森の姿を見ると、このオフも巨人のFA戦略はうまくいきそうにない。
(小田龍司)